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文化伝承の新たな一歩を踏み出したアイヌ民族

[2013年12月号掲載記事]

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アイヌ古式舞踊

札幌をはじめ、北海道の地名の80%がアイヌ語を語源としています。このような地名を通じて「アイヌが北海道で生活していた」ということは知られていますが、どのような暮らしをしていたのか、また現在はどのように暮らしているのかということはあまり知られていません。

アイヌは日本の先住民族です。和人(アイヌ以外の日本人)が漁業をするために北海道で暮らし始めたのは江戸時代(17~19世紀)で約400年前ですが、アイヌは発掘された土器などから2万年ほど前には北海道及びその周辺で暮らしていたと考えられています。

アイヌは狩猟や漁を中心とした暮らしをしていました。動物の毛皮や干した魚を元に、現在のロシアや中国そして日本の本州と交易していたこともわかっています。しかし、江戸時代になると和人によって自由な貿易が禁止されてしまいます。明治時代(19~20世紀)になるとアイヌ文化は破壊されました。国の近代化政策の一環として日本語の使用を強要され、生活の要であった狩猟や漁を制限されたのです。

そうした歴史を踏まえ、日本政府は国としてアイヌ文化の保存に配慮する責任があるとし、北海道白老町に国立の「民族共生の象徴となる空間」を作ることを決定しました。2020年の東京オリンピック前の完成を目指します。

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博物館入口

内閣官房アイヌ総合政策室の吉田賢司さんはその役割を説明します。「アイヌの文化や歴史などの学びの施設や、大学に保管されている遺骨の慰霊ができる施設を置くための空間です。アイヌの心のよりどころとなると共に、異なる民族が互いに尊重し共生する社会のシンボルになるようにと」。

白老町ポロト湖のそばには1984年に設立され、アイヌ自身が運営するアイヌ民族博物館があり、年間18万人ほどが訪れています。古式舞踊や音楽を鑑賞できる他、料理や演奏などの体験メニューも豊富でアイヌの文化を総合的に知ることができます。

北欧の先住民族文化を紹介するフィンランドのサーミ博物館とは姉妹博物館になっており、海外からも多くの人が訪れます。象徴空間建設に際しては道内に8つの候補地がありましたが、この博物館の存在が大きな決め手となり白老町に決まりました。

この博物館は、アイヌの若い世代へ文化を伝承する場としても重要な役割を果たしてきました。現在アイヌは道内だけでも24,000人ほどが暮らしていますが、皆日本の一般的な住居に住み、生活スタイルも他の日本人と同じです。アイヌの血を引いていてもその文化を知る機会はほとんどありません。

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山丸郁夫さん

アイヌであるというだけで差別を受けていた時代もあったため、文化や習慣をあえて子どもに教えない家庭がほとんどでした。ですから博物館で定期的に伝統的な儀式を行うことは、アイヌ自身にとっても文化を知り、実践する貴重な機会になっているのです。また雇用にもつながっています。「仕事として文化を伝承できるのはありがたいことです」とアイヌ民族博物館理事の山丸郁夫さんは言います。

山丸さん自身がアイヌの文化を見直すようになったのは40代になってからです。「博物館の敷地内にあるチセ(家)が火事になり、当時建築の仕事をしていたことから再建を手伝いました。場所の選定から建て方まで独特の作法があることを初めて知って驚きました」。このことがきっかけで民族博物館に勤めるようになりました。現在ではさまざまな伝統儀式を執り行いながら、若い世代への文化伝承事業にも携わっています。

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伝統楽器、トンコリの演奏体験

博物館では6年前から「担い手育成講座」を開講しています。アイヌの血を引く若い世代が文化を学ぶための講座で、3年間のカリキュラムが組まれています。現在は2期生が最終学年を迎えています。北海道では白老町の他、阿寒湖近くや平取町もコタン(アイヌの集落)で知られており、古式舞踊や木彫などそれぞれ特徴があります。受講生たちはそれらの土地にも出向き、総合的にアイヌの文化を学びます。

山丸さんは文化伝承に必要なことは自分たちの文化に対する誇りだと言います。近年はアイヌの工芸品などが見直されていることから、「我々の文化も捨てたもんじゃない」と感じている人が増えたように思うと話します。イベントなどで東京へ行ったときは民族衣装を着たまま地下鉄に乗る人もいて意識が変化しつつあることを実感しています。

山丸さんは講座を修了したメンバーが象徴空間の中心になって、新しい文化を生み出してほしいと話します。「文化は生き物ですから変わっていくのが普通なんです」。かたくなに古いものを残すのではなく、理解し取り込んで、そこから新しいものを生み出してくれることを期待しています。

象徴空間が完成する年に開催される東京オリンピックは「情報発信のよい機会。何らかのアピールができるとよいと思います」と吉田さんは言います。オリンピックは民族の祭典です。これまでもシドニーやバンクーバーオリンピックの開会式では先住民族がその文化を披露しています。アイヌ民族は文化伝承のための新たな一歩を踏み出しました。オリンピックはアイヌを広く世界に知ってもらうためのふさわしい場になるでしょう。

アイヌとはアイヌ語で「人」の意味です。

文:市村雅代


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