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北海道発:身近なものをエネルギーに変える暮らし

[2013年5月号掲載記事]

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ひと月の電気代が600円以下。物を大事にする生活を心掛けた結果、そんな数字を実現したのは札幌市に住む、はらみづほさんです。はらさんはバブル世代。東京で暮らしていた頃は現在とは正反対の、物を大量に消費する暮らしを送っていました。

しかし、10年間勤めた広告代理店を退職後、6年間で60ヵ国を旅したことで、その価値観はがらりと変わります。日本の暮らしがいかに物を使い捨てているか、ということに気がついたのです。中でもパレスチナ自治区へ行ったときに出会ったある兵士に、はらさんは衝撃を受けました。

「なぜ戦争をしているのか」というはらさんの問いにその兵士は「こんな戦争、本当は俺には関係ない。本当は誰も憎んでいないし、誰も殺したくなんかない」と答えたのです。「でも、今はこれが自分の仕事だからどうすることもできないんだ!」という叫びを聞き、はらさんは戦争の本当の原因を深く考えるようになります。そして戦争がエネルギー資源の奪い合いであることに思い至ったの
です。

物を使い捨てることはその物を作るのに費やされたエネルギーを無駄に使うこと。そのエネルギーを有利に得るために戦争が各地で引き起こされ、この兵士のような人を増やしているのかと思うと、物を消費する生活には戻れませんでした。帰国後、トイレットペーパーの代わりに使うのは水に。はなはハンカチでかむようになりました。電気もエネルギーを使って生み出され消費されていくものの一つ。家での消費電力を少なくするために冷蔵庫や電子レンジを処分し、電力の一部は自給するようになりました。

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はらさんの台所/電気代229円

 

この暮らしぶりを見聞きした人から「えらいですね」と言われることがあります。しかしはらさんはそう言われることに違和感を覚えると話します。「私にとってこの暮らしは『笑エネ』。がまんの生活ではなく、より自分らしく生きるためのクリエイティブな冒険なんです」。節約が目的ではなく工夫をこらして物を大事にする生活は、楽しい発見に満ちたものだと感じているのです。

2年前の東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故後、はらさんはさらに電気の使い方に気を使うようになりました。昨年末には、そんな暮らしぶりをまとめた「できた! 電気代600円生活」という本を出版。冷蔵庫を使わずに食品を保存する方法や暑さ寒さをしのぐテクニックなど、創造性に満ちたアイディアが並びます。はらさんは、自分のような暮らしはそれぞれの土地の特性を生かしてどこででもできるはず、と今後は全国各地で講演をする予定です。

その一方で、雪国、北海道ならではの事業に乗り出したのが、本間弘達さんです。本間さんは大手建設会社に勤めていたとき、雪冷房施設の建設に技術職員として関わったことをきっかけに雪利用の道に進むことになります。これまで数々の雪冷房設備を持つ施設の建築に携わってきましたが、悩みも生じてきました。施設の規模が大きすぎたり小さすぎたりすると会社では仕事を請け負えず、雪利用の企画がいくつも消えていったのです。

そんな本間さんをはっとさせたのは、東日本大震災以降に道内で繰り返し放送されていたテレビCMです。そこでは「見方を変えれば味方になる」というフレーズが流れていました。これを聞き、「のんびり会社員をやっている場合ではないと思ったんです」と本間さんは振り返ります。雪は雪国に住む多くの人にとってやっかいものですが、本間さんはその雪が大きなエネルギーになることを知っていたからです。

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冷蔵庫としての役割をはたす玄関
/レストランの簡易雪冷蔵米倉庫を設置

 

化石燃料に代わるエネルギー源を国中が模索する中、本間さんは一刻も早く、少しでも多くの人に雪エネルギーの実用化を広めなければと、雪冷房施設に特化した会社を起こすことを決めます。震災から1年後の2012年3月11日に雪屋媚山商店を立ち上げ、今年3月11日には勤めていた建設会社を退職。本格的に活動を開始しました。

本間さんはすでに帝国ホテルでの雪冷房施設導入調査に取り組むなど様々な計画を進めていますが、中でもデータセンターの北海道への誘致は様々なジャンルを巻き込んでのビジョンに発展しています。コンピューターのサーバーなどを運用するデータセンターを都内に設置した場合、大規模なものになると大量に出る熱を冷やすのに年間10億円以上の冷房電気代がかかります。しかし、同じ規模のものを北海道に設置して雪冷房で冷やすと、約2割の電気料金で運営できるのです。

本間さんのプランではデータセンターから排出される熱を生かして植物工場や陸上養殖場も併設。地域の雇用も生み出そうとしています。施設内で消費する雪には自治体の除排雪場を使いますが、それでも足りない雪は近隣から購入することも検討しています。これまで捨てるのにお金がかかっていた雪が逆に収入に変わるのであれば、雪国で暮らす人の雪への思いも随分と変わるはずです。データセンターへはすでに企業が名乗りをあげており、最短なら約2年で「スノーデータセンタービレッジ」第一号を見ることができそうです。

はらさんも本間さんも、東日本大震災をきっかけに身近にあるエネルギーの利用法をさらに促進させてきました。「震災をきっかけにこれまで国任せだった部分を自分たちでなんとかしなければ、と思い始めた人は増えましたね」と言うのは家次敬介さんです。家次さんは富良野市で約20年前から家電店を営んでいますが、将来を見据えて人や環境を改善できるような仕事を、と17年ほど前に自然エネルギー利用の設備の販売もはじめました。

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ベランダなどに設置できる太陽光パネル
新土壌浄化工法で汚水が飲料水レベルにまできれいに

 

初めて販売したのは風車で、現在も太陽光や風力などを生かした発電設備を扱っています。しかし、主力商品は木くずを圧縮したペレットを燃料として使用するストーブや地中の細菌の力を利用して汚水を処理するシステムです。「太陽光発電を扱う会社は震災以降だいぶ増えましたね。うちは今まで普及していないものや、新しい技術を北海道で取り入れていけるノウハウの開発をどんどんやっていきます」と言います。

家次さんは、現在仲間と水力発電の装置を実験中。その電力と利益を地元に還元する手段を構築しています。地域外の大企業が発電装置を設置しても、その収益のほとんどは地元に還元されません。そうではなく「地域のエネルギーを使って地元に利益が行きわたるようなシステムをつくりたいんです」と実現間近のこのプランを嬉しそうに話します。自分の身の回りにあるものを何かに生かせないかと考えてみれば、エネルギーの種は無限にあるのかもしれません。

はらみづほさんのサイト
雪屋媚山商店
家次敬介さんのサイト、三素

文:市村雅代


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