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自然を表す芸術を好む日本人

[2013年1月号掲載記事]

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六義園

 

日本は国土の約80%が山地です。また雨が多いため、水や緑も豊富です。そのため日本では多くの場所で、植物の茂った山や水辺の風景を見ることができます。そしてそれらの風景は季節ごとに変化します。日本は四季の区別がはっきりしているからです。このような事情から日本人は豊かな自然やその四季の変化に親しんでいるので、手つかずの自然(開発が行われていない自然)を好みます。

このような好みは、日本庭園によく表れています。伝統的な日本庭園では曲がった小川や加工していない石など、自然な形のものがよく使われるのです。木ももともとの自然の形をいかすように手入れされます。ヨーロッパや中東に多いまっすぐな花壇や小川、中国で好まれる人工的な形の石などと比べると、日本庭園の特徴は明らか
です。

「江戸時代(17~19世紀)に大名(地方の支配者である有力な侍)によって造られた庭園には、風景画のような特徴が見られます」と、東京都公園協会文化財庭園課の海老名誠さんは言います。「例えば富士山のような形の小山を造ったり、なつかしいふるさとの優れた景色を縮小して再現していたりします」。

「日本庭園は見る位置によって風景が変わるように設計されています」と海老名さん。坂を上るときは山道を行くような印象を受けるように、池の近くでは美しい海岸に立っているような感じがするように、というぐあいです。「草花も、春には新緑、秋には紅葉など四季の特色を出すように植えられています。自然を凝縮した庭なんですよ」。

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浜離宮恩賜庭園/六義園

 

「もともとの地形や木などをいかして庭を造ろうとするのも日本庭園の特徴です。例えば高低差がある場合にはそれを利用して滝を造ったり、海が近い場合は海水を引き込んで池を造り、水位の変化を楽しんだりします。潮が引くと、それまで水に隠れていた砂浜が現れたりするんですよ」と海老名さんは日本庭園の見どころを説明します。

自然のままに見える日本庭園ですが、管理はとても大変です。「木を透かして美しい風景が見えるようにと意図されている庭では、木をいつも手入れして茂り過ぎないようにしなければいけません。近年は温暖化によって特定の木がむやみに伸びたり、昔咲いていた花がその時季に咲かなくなったりということも起きています」と海老名さん。「日本庭園は職人の高い技術によって保たれています。そのような技は今後も引き継いでいかなければと思いますね」。

自然の風景を盆の上に砂や石を使って表現する「盆石」という伝統的な芸術もあります。数百年の伝統とさまざまな流派がありますが、細川流は16世紀の大名、細川忠興が始めた流派で、黒い盆の上に自然の石と白い砂で風景を表すのが基本です。

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盆石

 

細川流では石で山を表し、白い砂で砂浜や水の流れ、木々などを表現します。小さなさじ(スプーン)で砂を置き、鳥の羽根などで模様をつけていきます。完成した後は、しばらく保存することもありますが、たいていは石を外し砂を箱に戻して片づけます。

「盆石はもともと茶道と関係があった芸術です。いらっしゃるお客様一人だけのために、その方の好みや季節を考えて用意し、床の間に飾ったのです。ですから終わった後は片づけてしまいます」と細川流盆石東京九曜会会長の古明地節子さんは言います。「打っているときは他のことは何もかも忘れて集中できます。一切の雑念が消えて心が無になります」。

「私はもともと、水墨画や京都の石庭が好きだったんです」と古明地さん。「ですから砂の濃淡で風景を表す盆石に、水墨画と同じものを感じました。砂で水を、石で山を表すのは石庭の枯山水とも共通していました。むだをそぎ落とした表現なので、逆に見る側は自由にイメージをふくらませることができます。その風景に入り込んでその中に立っているような気分を味わえます」。

「石を愛でるのは中国から伝わってきた文化ですが、日本人はそれらを日本人好みの文化に変化させました」と古明地さんは話します。「盆石は日本のいろいろな文化と関わっています。千利休が考えたといわれる景を今でも打ったりしますし、過去数百年のお手本を見ているとその時代にはやった絵や着物の影響が感じられます。現在の細川流では写実的な景が増えてきているんですよ」。

石そのものに自然を感じて観賞する「水石」という趣味もあります。例えば山形の石を富士山に見立てて飾ったり眺めて楽しんだりするのです。「水石は、見る人が自由に感じることのできる趣味です。山の形の石を見ながら、その山に登っていく自分を想像してもいいですし、山を詠んだ漢詩や和歌を思い出してその風景を思い描くこともできます」と日経水石会会長の渡辺浩氣さんは言います。

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水石

 

水石も14世紀頃の記録に残っている歴史のある趣味です。色の美しい石を愛でる中国の文化が日本人の好みに合わせて変わり、わび・さびを感じさせる地味な石、自然のままの石が愛されるようになったものです。現在、日本各地に400を越える愛好家の団体があり、月刊誌「愛石」など石の専門誌もあります。「数百年前から伝わる名石をお金を払って買い集める人もいますが、私は川や海へ行って自分がいいと思う石を採集するのが好きです」と渡辺さん。

「石を見ていると、高い部分は山、平たい部分は平野というように自然の風景が見えてきます。馬に乗った人の置物を添えてみると、昔の山里を旅人が行くようなイメージになります。一方、舟の置物を添えると、石は一転して海岸のように見えてきます。いろいろな見方を試せるのであきません」と渡辺さんは水石の魅力を語ります。

「水石という趣味は山や森の多い日本の風土や、季節の変化に敏感な日本人の感性と深く関わっていると思います」と渡辺さん。近年の日本は都市化が進んでいますが、日本人の自然を愛する気持ちは変わっていないようです。

東京都公園協会
盆石 細川流九曜会

文:砂崎良


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