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古代史と神話がまじりあう古事記

[2012年6月号掲載記事]

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古事記は日本の古代の歴史を書いた本で、現在残っている日本の歴史書の中ではいちばん古い書物です。前半は神々が日本をつくったという神話ですが、後半へ進むにつれ史実の記録が増えていきます。古事記の神話は日本の宗教「神道」と深く関わっていて、多くの神社が古事記に出てくる神々をまつっています。

古事記に出てくる地名が残っている地域や、古事記と関わりのある話を代々伝えてきた神社なども、日本のあちこちにたくさんあります。天の神々が降り立った場所だとされている宮崎県の高千穂、力比べに負けた神が逃げ込んだ地といわれている長野県の諏訪など、有名な観光地になっている場所も少なくありません。

中でも島根県は、古事記の神話の約3分の1が島根県に関係あるといわれるほど縁の深い土地です。縁結びの神として若い女性に人気の神社「出雲大社」も、古事記に出てくる建物が起源だとされています。そのほかにも多くの神社や地名、郷土芸能が古事記に由来しています。「各地域、各集落で伝統的な神事は数え切れないほどあります」と、神々の国しまね実行委員会の奥田未和さんは言います。

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写真左:古事記に登場する稲佐の浜(島根県)
写真右:出雲大社

 

古事記は日本人に広く知られている本です。たいていの人は学校の授業で、「古事記」というものを知り、内容の一部を読みます。古い日本語で書かれていて難しいので、原文で読む人はあまりいませんが、いくつかのエピソードはとても有名です。それは、子ども向けの本によく取り上げられるからです。

特に、岩の扉を閉めて閉じこもってしまった太陽神アマテラスを神々が知恵を働かせて連れ出すという「天岩戸」の話、強い神が悪いオロチ(大きな蛇)を退治する「ヤマタノオロチ」の話、弟をいじめた兄が罰を受ける「海幸山幸」、心のやさしい神がウサギを助けた結果幸せになる「因幡の白うさぎ」は、絵本の定番です。話がおもしろい上、人間のように話す動物たちが登場するので、子どもが喜んで読むのです。また、悪い人がひどい目にあい、よいことをした人が幸せになるという内容なので、親たちも子どもに読ませたがります。

しかし古事記は古い歴史書なので、現代の子どもには好ましくない話も含まれています。登場人物がとても残酷な方法で殺されてしまうことなどです。「古事記に忠実にかきたいと思いましたが、かといって子どもが怖がる話にはしたくありませんでした」と、絵本「因幡の白うさぎ」をかいた伊達恵美子さんは言います。「ですから子ども向けでない部分は省略するようにしました。心癒される話にしたかったのです」。

「因幡の白うさぎの主人公は大らかで心の温かい、あまり戦いを好まない神です。このようなヒーローらしくない神が、強くて勇ましい神と同じくらい大事に書かれているところが古事記の魅力です」と伊達さん。「それに古事記の中では人も動物も平等です。白うさぎも神様になれるのです。とても日本人らしい考え方だと思います」。

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写真左:天岩戸を描いた絵 (「天照大御神」伊藤龍涯画 神宮徴古館蔵)
写真右:因幡の白うさぎ(伊達恵美子著/文芸社)

 

古事記の神話は、神々が結婚して日本列島を生んだり、一人の英雄が九州から関東までを旅して戦ったりと、内容がダイナミックです。そのため大がかりな舞台作品にされることもあります。オペラ「古事記」やスーパー歌舞伎(現代的な歌舞伎)「ヤマトタケル」がその例です。日本画の題材にもよく使われます。一方、古事記のエピソードやキャラクターを使ったまんがやゲームも多く存在します。こちらは自由な発想で作品化していることが多く、若い人やまんが・ゲーム好きな人の間で人気です。

「『テレビゲームの大神で遊んだ人は、キャラクターがアマテラスやスサノヲたちだったのだとわかるでしょう』と、私が英語に訳した古事記を読んで、感想を寄せてくれた人がいます」。そう語るのは詩人のヨウコ・ダンノさんです。「古事記には優れた学者による英訳本があり、専門的に学ぶ人の必読書となっています。一方私が試みたのは、一般の人が楽しんで読める英訳です」と翻訳の動機を語ります。

201206-1-4「訳すとき工夫が必要だったのは人名や地名です」とダンノさん。「古事記には地名の由来を語る話も多いですし、人名はそのまま訳すと長くなります。私は古事記を読んで、神々や人間がいきいきと動き回る、とてもおもしろい冒険物語だと感じましたから、できるだけ忠実に訳し、それでいてわかりやすい、160ページ未満の本にしました」。

「古事記の魅力は古代の人々の心にふれられることです」とダンノさんは言います。「人々はあらゆるところに神々の存在を感じていました。例えば涙から嘆きの女神が生まれてくるのです。また、登場人物の率直で力強い行動や、詩情豊かなことばも魅力的です。故郷を思う心や悲しい恋などは、今も古代も変わりません」。

古事記には、政治に利用された面もあります。天皇の命令によって編纂された書物なので、8世紀頃の政治の影響を受けていて、天皇の先祖を神としているのです。戦前(第二次世界大戦前)には、古事記を書かせた天皇の子孫に当たる天皇を、神だと考える思想の根拠にもされました。その反動で戦後の日本には、古事記を大切にする人と嫌う人の両方が生まれました。

このように古事記をめぐってはさまざまな意見や考えがあります。しかし貴重な本であることは確かです。古いお墓が見つかったときの史実確認に古事記の記録が役立ったり、古事記の研究から昔の日本語がわかったりするからです。それに、人の感情が細かく描かれているので、文学作品としても高く評価されています。また、動物、植物、山、川にも神が宿るという考えなどは、今の日本人にとってもなじみ深いものです。

神々の国しまね実行委員会
文芸社
アハダダ・ブックス

文:砂崎良


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