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人形に見る日本人の感性

[2011年3月号掲載記事]

3月3日はひな祭りです。これは、女の子の健康な成長を祈る行事で、ひな人形と呼ばれる人形に、桃の花や甘い酒をそなえる習慣があります。人形が、病気やけがなど悪いことを本人の代わりに引き受けてくれる、という考え方があるからです。地方によっては紙や草などで、小さくてシンプルなひな人形を作り、川や海に流したりもします。

ひな人形の代表的なものは、平安時代(794~1192)の豪華な衣装をまとった男女一対の人形です。階段のような台をセットして赤い布を敷き、男女一対の人形だけでなく、音楽家や他の人形、生活の道具などもならべる、豪華な飾り方もよく見られます。値段は、安いものもありますが、一般的な家庭が10万円以上のものを買うこともめずらしくありません。

「ひな祭りが盛んになったのは、江戸時代(1600~1867)です」と、約170年の歴史をもつ人形のお店、株式会社久月の総務部次長、横山久俊さんは言います。「江戸時代には、江戸(今の東京)のあちこちにひな市という、ひな人形を売る市場がありました。久月本店がある浅草橋にも、ひな市がありました」。今も浅草橋の江戸通りには、人形のお店がたくさんあります。

人形を飾るのは3月だけではありません。端午の節句と呼ばれる5月5日には、五月人形が飾られます。これは、男の子の健康と成長を祈るためのものです。元気な男の子に育つように、という願いをこめて、侍のよろい(戦いのときに身を守るための道具)を飾ることもあります。お正月にも、人形のついた羽子板がよく飾られます。祖父母が孫に人形をプレゼントする習慣もあります。

「お正月、ひな祭りも端午の節句は、もともと節句(季節の変わり目)を祝うお祭りでした」と横山さんは言います。「季節の変わり目ごとに、日本人は人形を飾り、健康や安全を祈ってきたんです」。横山さんが担当しているのは、ひな人形をデザインする仕事です。「どのようなひな人形をつくるかを検討し、顔だち、服の色や生地、道具のデザインをひとつひとつ決めていきます。昔の資料を研究して衣装の古い色を復元したら、意外にもパステル調のモダンな衣装に仕上がって驚いたこともありますよ」。

日本の伝統芸能「文楽」は、古い歌に合わせて人形を動かし、芝居を演じさせる芸能です。文楽の人形は、身長がだいたい120~150センチくらいで、細かい操作が必要です。例えば、重要な役の人形は、3人で動かします。一人が人形の全体と右手を、もう一人が人形の左手を、残る一人が人形の足を動かします。

文楽の人形には、人間らしい演技をさせるための細かい工夫がたくさんあります。細い糸を使って首や眉を動かせる人形、変身できるようにふたつの顔をもっている人形などがあります。演じさせる役に合わせて衣装や髪形を替えますし、ときには顔の色も塗り替えます。文楽人形の表現力は高く評価されていて、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産にも登録されています。

「からくり人形」にも、細かい動きに対する日本人のこだわりが感じられます。この人形は江戸時代の職人が、ヨーロッパの機械時計を参考にして、車輪や歯車で動くように工夫しました。例えばお茶の入った湯飲みを人形に持たせると、ストッパーがはずれて人形が動きだす、という仕掛けです。このようなからくり人形は「人形芝居」として、江戸時代のショービジネスにもなりました。

日本の子どもたちは、晴れになってほしいと思うとき、「てるてる坊主」という人形を作ります。これはバドミントンの羽のような形をした人形です。白い紙や布に綿などを入れ、ひもでくくって作ります。これを窓辺などにつりさげてお祈りすると、次の日よい天気になるといわれています。逆さにつるすと翌日雨になる、ともいわれます。

「こけし」は日本の庶民に親しまれてきた人形です。東北地方(本州の北部)の特産品で、ろくろ(回転する台)に木をのせ、けずって作ります。江戸時代の後期ごろから、東北地方の温泉などで土産物として売られるようになり、子どもたちの身近なおもちゃになっていきました。伝統的なこけしは、職人からその弟子へと作り方が伝えられたため産地ごとに個性があり、11通りほどに分けることができます。

戦後(1945年以降)は、伝統的なこけしだけでなく、「創作こけし」と呼ばれるこけしも作られるようになりました。また、こけしの芸術性が評価されるようになり、全国的に有名にもなりました。1953年からは宮城県大崎市鳴子温泉にて「全国こけし祭り」が、1959年からは宮城県白石市にて「全日本こけしコンクール」というこけしのイベントも開かれています。

「私たちが子どものときは、生活があまり豊かではありませんでした。ですからひな祭りにひな人形を買ってもらえず、こけしを並べてお祭りしたものです」と、日本こけし館(宮城県)の髙橋ゆきえさんは言います。「こけしの魅力はそぼくな形です。それに、日本の伝統的な家は木でできているでしょう。だから日本人は、木でできたこけしに安らぎを感じるのだと思いますよ」。

日本には「人形供養」をしてくれるお寺や神社があります。日本人には壊れたり古くなったりした人形をただ捨てるのではなく、一緒に遊んでもらった感謝と愛情を込めて焼いて供養する習慣があるからです。人形に対する考えには、物にも命を感じる日本人の感性が現れていると言えるかもしれません。

株式会社久月

文:砂崎 良


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