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香りに集中すると宇宙ととけ合える

[2015年5月号掲載記事]

201505-6-2

香研究家
渡辺えり代さん

日本には香道という伝統文化があります。香道では香木の香りは「かぐ」といわず、「聞く」といいます。聞香とは、心を研ぎ澄まして耳を傾けるように香りを鑑賞するという意味です。「日本は四季があります。それぞれの季節の樹木や花の香りに恵まれ、適度な湿気もあります」と香研究家の渡辺えり代さんは話します。

「また、北海道から沖縄まで気候が多様で、3千メートル級の山々もあり、生態系が豊かです。この環境が日本人の繊細な感覚、とくに嗅覚と味覚を育んだのです。私は、日本のお香に限らず、世界の香文化と歴史、そしてつながりに興味をもっています」。

渡辺さんは東京で「世田谷香サロン」を開いていて、そこを拠点に、日本に千年前から伝わるレシピに基づいて練香(香原料を蜜で練り合わせたお香)を作ったり、お香を通じて日本の古典文学や伝統文化を学ぶワークショップを開いています。参加者は、「日本らしいことを体験してみたい」という外国人から、「いい香りを聞くのが楽しみ」と通う人までとさまざまです。

渡辺さんが行っているのは、シンプルに香りを聞く集まりで、一日だけ受講する人もたくさんいます。「ばりばり働いている方がお香を聞くと、仮面が落ちたかのようにやわらかい表情になるんですよ」と渡辺さんは言います。

「伝統的な香道はもちろん奥が深くてすばらしいですが、香りを聞き比べてそのお香の名前を当てるという競技形式なので、頭を使います。私はお香の鎮静作用やリラックス効果を味わっていただきたいので競技はせず、いい香りを堪能していただくやり方をとっています。お香は昔から魂の食べものといわれていて、無心になって香りに集中すると、自分という枠の意識が消えて、宇宙全体と一つにとけ合い、至福を感じます」と渡辺さん。

世田谷香サロンは口コミで広まっています。オーストラリアの旅行サイトで「東京だけでできることトップテン」の一つとして取りあげられたり、ドイツの旅行サイトでも「リラックスできる場所」と書かれたりしました。「お香を楽しむのは、そもそもとても国際的な文化なのです」と渡辺さん。キリスト教でもイスラム教でも仏教でもお香をたくというのは神聖な行為です。香原料の交易は古代から国際的に行われてきました」。

「ロンドンで美術史を学んでいたとき、JAPANが漆器を意味すると知って日本を再発見しました。その後ボストンで芸術療法を修めてその仕事をし、芸術療法によって得られる効果がお香にもあると気がついたのです。48ヵ国への旅と10年間の海外生活から得た異文化体験は私の一番の財産です」。

渡辺さんは「祈りや願いをこめて作った練香をたくと、その思いが天に届くような気がします。新しいスタイルの香道具を開発して、世界に発信したいです」と意気込みます。

香研究会IRI

文:砂崎良


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