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横綱をめざすエジプト人力士

[2013年10月号掲載記事]

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大砂嵐金太郎関
本名:アブドエルラハマン・シャラーンさん

「関取になれたときはとても幸せでした」と大砂嵐金太郎関は言います。大砂嵐関は日本の伝統的な格闘技、相撲の力士(レスラー)です。プロとして相撲を取っている人は約700人いますが、一人前の力士として認められる関取になれる人はその約8%しかいません。大砂嵐関は今21歳、入門からわずか2年で十両に昇進しました。

日本の相撲は千年以上の歴史がありますが、大砂嵐関のような力士は今までいませんでした。大砂嵐関は初のエジプト人でアフリカ出身、イスラム教徒の力士なのです。その上とても早く昇進したので、日本の総理大臣のパーティーに招かれるほど注目されています。

大砂嵐関は1992年、エジプト北部のダカリーヤ県に生まれました。父親はプロのサッカー選手でしたが、大砂嵐関はサッカーが嫌いで子どものときからボディービルをやっていました。

14歳のとき、ボディービルのジムで相撲を趣味としている人に出会いました。そして「やってみませんか」と誘われました。相撲はエジプトではマイナーな競技です。愛好者は50人くらいしかいません。「太りすぎた男二人が押し合っていて、まるで象がぶつかり合っているみたいだと思いました」と大砂嵐関は正直に言います。 

大砂嵐関はそのとき体重が約120キロありました。そして75キロくらいの人に挑戦しました。「簡単に勝てる」と思っていましたが、何度やっても負けてしまいました。「これはなんというスポーツだ」とショックを受け、家に帰ってすぐインターネットで調べました。そして貴乃花関という有名な力士の取組の映像を見て感動しました。

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大砂嵐関は翌日ジムへ行き、「日本でプロの力士になりたい」と監督に言いました。もちろん相手にされなかったので、インターネットの動画を見て毎日練習しました。その結果1ヵ月後にはエジプト大会で2位、翌年には1位になりました。世界大会での成績も優秀でした。しかし相撲のチャットに「日本へ行って力士になりたい」と書き込んでもばかにした答えが返ってくるだけでした。日本の相撲関係者に手紙も書きましたが、返事はほとんど来ませんでした。

しかしやがて熱意が認められて、2011年9月、日本へ行けることになりました。東日本大震災の後だったせいもあって、母親は大反対しました。大砂嵐関は「この5年間ずっと、日本へ行くことを夢に見てきたんです。お母さんのためにも全力でがんばるから」と説得して来日しました。

日本とエジプトでは、文化の違いがかなりあります。例えば何か問題が起きたとき、エジプト人は自分の考えを主張しますが日本人はすぐ謝ります。エジプトでは男性同士でも手をつなぎますが日本人はしません。力士の裸に近い姿は日本人には見慣れたものですが、エジプト人は抵抗を感じます。イスラム教では男性でも腰回りは覆うべきだとしているからです。

「エジプトでは皆、まわし(力士の帯)の下にスポーツ用パンツをはいていました。私も最初は恥ずかしかったのですが、すぐにジョークの種にするようになりました。まわしってアラビア語で牛という意味なんです」と、大砂嵐関は牛の鳴きまねをしてみせました。そして「もう慣れました。今はこれが私のフォーマルな服装です」と笑います。 

前向きな大砂嵐関ですが、カルチャーショックを受けることもよくあります。「エジプトと日本は全く違う世界です。その上、相撲の文化は日本の文化とも違うところがあるんです」。相撲の世界では上下関係がはっきりしていて、先輩は後輩に命令します。新人は掃除や洗濯、茶碗洗いなどをしなければならないので、自由に外出できません。相撲のこのような習慣は、日本人の目から見てもかなり保守的なものです。

「新人のときは六人部屋に住んでいて、雑用をたくさんしました」と大砂嵐関。その他にも「大砂嵐金太郎」という力士としての名前をもらったり、昔の侍と同じ髪型をしたり、着物を日常的に着たりと特殊な習慣があります。力士が所属する組織(ジム)を「部屋」と呼ぶなど、独特な言いまわしもします。

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右: 親方、大嶽忠博さん

 

日本人でも相撲の世界になじめないで辞めてしまう人がいます。「私も正直、まだカルチャーショックを克服できていません。食べ物も人も文化も、本当に全然違う。毎日問題がたくさん起きます。それに日本語も、周りの人が話すのを聞いて覚えていますが、まだうまく話せません」と悲しい顔になりました。「でも日々稽古に励んで、文化も学んでいます。がんばることしかできませんから」と言います。

相撲の世界で関取は特別な存在です。高級な着物を着ることが許されたり、身の回りの世話をしてくれる人も付きます。華やかな化粧まわしを着けて、取組前に儀式を行う習慣もあります。「快感でしたが、とても緊張しました」。関取でない力士は年に6回、7~15万円の手当を受け取るだけですが、関取は月に100万円以上の給料をもらいます。

しかし大砂嵐関は「お金が全てではありません。お金で健康は買えませんから」と言います。相撲は激しくぶつかり合う競技なので、けがをしてしまう力士も少なくないのです。「母も『日本からは何も買ってこなくていい、ただ元気でいて』と言います。関取になることは、いいことですが大変です。関取でい続けなければならないという責任も感じます」。

大砂嵐関はラマダン(断食)のとき朝から何も食べずに戦い、勝ちました。このようにイスラム教徒の食事や習慣が話題になることが多いですが、「宗教が障害になることはありません。偏見を持たれることもありません」と言い切ります。「注目されるプレッシャーもありますが、考え過ぎないようにしています」。大砂嵐関の夢は横綱(地位が一番高い力士)になることです。「理想は貴乃花関です。よい心を持った方なので。私も家族や友達、皆から誇りにされ愛される力士になりたいです」。

協力:エジプト大使館観光局
財団法人日本相撲協会
大嶽部屋

文:砂崎良
写真:浜野裕


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