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江戸時代の装飾品に感動

[2012年3月号掲載記事]

201203-5

日本のファッション業界に関わるイギリス人ジャーナリストである私は、なぜこれほどニッチの分野を専門にするようになったのかとよく聞かれます。日本でも人気があるヴィヴィアン・ウエストウッドなど、イギリス人デザイナーに興味があったことが日本への橋渡しに一役買ったことは間違いありませんが、当初私の日本に対する興味は「17世紀の日本」という少し意外なところにありました。

普通ファッションは今存在するものと思われているため、私が最初に魅かれたものが前世紀の日本の服飾とは関係のない装飾品だといえば驚くかもしれません。私が今日本で生活して働くようになった最初のきっかけは、つつましい根付けでした。伝統的な日本の服にはポケットがなかったため、帯に付ける便利な留め具として、帯にひもを通して巾着など入れ物をつるせるように根付けが考案されたのです。

根付けがひとつの道具から細かい彫刻を施した名品へと進化するには、この実用性の問題が不可欠でした。日本の服、特に男性の服には装飾やアクセサリーを付ける余地があまりありませんでした。根付けは実用品だったため、平民階級と商人階級が富や地位を誇示することを禁じた徳川(江戸)時代の慣習と法律から免除されていたのです。ですから、急速に台頭しつつあった当時の裕福な商人階級にとって自己表現の手段となり、上流階級が決まって好んだミニマリズムと洗練に対する答えにもなりました。

根付けはその後社会のあらゆる分野に侵透しましたが、当初は平民の大衆的趣味を反映した題材を形どるものがたくさんありました。動物、おとぎ話の怪物、神話の戦士、それに性や飲酒といったもっと生臭い題材さえ表現する宝庫です。こうした題材は、当時を象徴すると私達が思っている華道と茶道からは程遠いものです。ネオンが輝く現代日本の性急さと、昔の日本で認知されていたミニマリズムと控え目な優雅さとの間にある溝をあらゆる意味で埋めるものです。労働階級の一般的な日本人に愛された根付けを見ると、結局、日本は文化面ではほとんど変わっていないことがわかります。

ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で根付けに出合ったとき、私は日本の美にいっそう目を開かされました。石庭から受ける感銘とは違う感銘を受けたのです。笑う鬼、戦に乗り出す兵士のヒロイズム、蛇がからんだ頭蓋骨の気味悪さにうっとりしました。深刻さと遊び心を気軽に追求する比類ない品質の職人芸です。中でも暗い題材は重要な問題を提示しています。徳川時代の日本でこんな絵柄を腰につけ、人に見せながら歩き回っていたのは一体どういう人だったのでしょうか。もしかすると前世の私自身だったのでは。

この日本の美に惚れたことで、私は徳川時代の日本で生まれた美のヒントを求め続けてファッションのキャリアに至りました。今でも私は、魚と灯籠と花を表現した根付けのついた財布を身に付けています。

文: サミュエル・トーマス


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