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中洲に造られた「生」の文字

[2011年8月号掲載記事]

兵庫県宝塚市武庫川の中洲に、石を積んで造られた「生」という文字がありました。市内在住の小説家、有川浩さんは、このオブジェを見て創作意欲がわき、小説「阪急電車」を書くきっかけの一つになったといいます。武庫川にかかった鉄橋を渡るときに、ちょうどこの文字が見える様子が、小説の冒頭に登場しています。

この文字は、宝塚市で生まれ現在も在住の現代美術家、大野良平さんが2005年に造りました。「阪神・淡路大震災から10年目に、再生というテーマの美術展を企画していて、会場のビルから出た表現をできる場所はないかと考えていたんです。そんなときにこの場所を思いつきました。街の中心に大きな川が流れていて、きれいな中洲があることに新鮮な感動を覚え、鎮魂の想いを込めて『生』の文字を造ることにしました」。

2006年に川の増水で消えてしまいましたが、2010年「阪急電車」の映画化をきっかけに、大野さんの母校でもある地元の宝塚大学の学生や住民、子ども達などボランティアの協力で再現することになりました。学生と共に参加した宝塚大学造形芸術学部助教、上岡秀拓さんは、「中洲には身の丈ほどの草木が生い茂っていて、刈り取る作業が大変でしたね。長靴で川に入って、刈り取った草を向こう岸へ運ぶ作業を学生達は黙々とやりました。普段、芸術作品に取り組むための精神力と体力を養っているから、苦労と思わずにがんばれたのだと思います」。

大きい石から順に積んでいく作業に思いを込めたと上岡さんは話します。「私は阪神・淡路大震災のとき、日本家屋の梁の下敷きになって3~4時間生き埋めになりました。この経験があるので、1個、1個の石に亡くなった人を思って積みました」。縦約20メートル、幅10メートルの巨大なオブジェは、延べ100人のボランティアの手によって2010年12月に完成しました。

映画のエンディングに流れたり、この「生」の文字を題材にした映画のスピンオフドラマ(映画本編とは別に作られた番外編ドラマ)「征志とユキの物語」の映像にもおさめられました。新聞やテレビなど様々なメディアで取り上げられて話題になりました。宝塚市の新しい観光名所として注目を集めていましたが、今年5月の増水で再びなくなってしまいました。

「残念ですが、消えてしまったこの期間も大切にしたいと思っています。元々、コンクリートで固めたものではなく、自然と共存するものをと考えていました。形あるものはいつかはなくなりますが、石を積んだ人達の想いは確かに残ると思います。今回も、たくさんの人達の想いが込められているので、より多くの人の心に伝わる芸術作品になったのだと思います」と大野さんは続けます。

周囲の強い要望もあり、再び「生」の文字を再現する動きが始まっています。「震災から復興した宝塚の街から、流されても再生できるというメッセージを、東日本大震災で被害にあわれた方に向けて送りたいですね」と大野さんは話します。

写真提供:記憶の中の「生」再現プロジェクト

文:瓦谷登貴子


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