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二人の男を通して描く幕末

[2013年3月号掲載記事]

201303-7-1

1巻表紙。手塚治虫著。
小学館発行

 

陽だまりの樹

作者である手塚治虫は、日本では「まんがの神様」と呼ばれており、現在のまんがの基礎を築いたといわれています。医学博士でもある手塚が、自分の曽祖父である手塚良庵(後の「良仙」)を主人公として、幕末(徳川幕府が政権をとっていた江戸時代の末期)を舞台にした物語を描いたのがこの作品です。

蘭方医(西洋医学の医者)の家に生まれた良庵は女好きで、遊郭(遊女といわれる売春婦が集まる地域)が大好きな男。一方、武士の家に生まれた伊武谷万二郎はまじめで、女遊びやおせじが大嫌いな男。最初は殴り合いのけんかをするほど仲が悪かった二人の主人公は、次第に友情を結びます。タイトルの「陽だまりの樹」は、水戸藩士の藤田東湖が伊武谷に語った徳川幕府の姿で、「見た目は立派な大樹だが、中身は虫に食われて腐っている」という意味です。

藤田に「枯れかかった徳川幕府という大樹の最後の支柱になれ」と言われた伊武谷は、自分の人生の目的を見つけたと感じます。大地震で人々を避難させた功績が認められた伊武谷は、日本初のアメリカ総領事であるタウンゼント・ハリスの警護役に任命されます。彼はその縁で、ハリスの付き人であるヘンリー・ヒュースケンと友情を結びます。しかし、このアメリカ人の青年は、自分の性欲を制御できずに問題を起こし、伊武谷やハリスを困らせます。

一方の良庵は、江戸を出て大阪へ留学します。緒方洪庵が主催する「適塾」で西洋医学を学ぶためです。しかし、大阪の遊郭にも行ってみたいという誘惑に勝てず、適塾へ行く前に遊郭へ出かけます。そこで、遊女が腹痛で苦しむのを見た良庵は、やったことがない開腹手術を考えます。しかし結局、彼女を助けることはできませんでした。良庵は勉強のために、その遊女の死体を解剖して、内臓を自分の目で見ようと決心します。

良庵から解剖の許可を求められた大阪の役人は「何をアホな!」と断ります。しかし実は、ひそかに、適塾の門下生にだけは許可していました。その現場に立ち会えた良庵は、人体について何も知らないことを思い知ります。一方、江戸では、良庵の父らが、西洋医学であるワクチンの施設を建てる許可を、幕府から得ようとしていました。しかし、彼らを快く思わない漢方医(東洋医学の医者)たちに政治的な圧力をかけられ、命の危険さえ覚悟する日々でした。

すぐに遊郭へ行きたくなる良庵ですが、必死になって勉強する場面もあります。伊武谷がアメリカ総領事の警護をしていると知った良庵が、彼に強引に頼んでヒュースケンと会い、英語の医学書の翻訳をしてもらう話も描かれています。

この作品には読みどころがたくさんあります。性格、立場、国籍などの違いを越えて結ばれた男たちの友情、西洋医学への偏見と闘った日本人たちの情熱、当時の徳川幕府の内情、生きるか死ぬかの剣士たちの勝負、男女の恋愛模様、遊郭での遊女や客の振る舞いなどです。

文:松本誠也


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