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銭湯を彩る背景画を描き続けて半世紀

[2010年2月号掲載記事]

400年以上の歴史を持つ公衆浴場「銭湯」。一般家庭に風呂が広まる1970年代終わり頃までは、ほとんどの人が利用していました。当時の典型的な銭湯は、男女に分けられた脱衣所の入口に、湯銭(銭湯の料金)の受け取りや見張り場所として番台があり、わずか数メートルの高さしかない浴室内の壁越しに男湯と女湯のあいだで会話ができました。

その浴室内の壁に背景画を描くようになったのは、明治から大正へと元号(天皇になってから亡くなるまでの期間)が変わる1912年のことだったといわれます。千代田区にあったキカイ湯の主人がある画家に依頼したことに始まるそうです。その画家が静岡県出身で富士山が大好きだったため、銭湯のペンキ絵は富士山が主流になったようです。

1935年に東京都杉並区で生まれた丸山清人さんは、現在、都内でわずか二人しかいない銭湯背景画絵師です。親せきの営む広告代理店、背景広告社に入社した18歳から、74歳を迎えた現在も絵師として活動しています。依頼があれば日本全国どこへでも行き、富士山や芦ノ湖、瀬戸内海などの風景画を描き続けています。

「絵は小さいときから得意でした。戦争の被害を避けるため山梨県へ移り住んでいた小・中学生の頃には、火の用心向けの防災ポスターがコンクールで入賞したこともあるんです」と回想する丸山さん。「当時は書道も習っていたんですが、絵師になってからは看板などに文字をかくときに役立ちましたね」。

社会人として絵師の道に進んだ丸山さんの師匠は、会社社長だった丸山喜久男さんでした。同じ会社で営業を担当していた父親と従兄弟です。「特別な指導はしてくれませんでしたから、技術は見て盗みました。仕事は毎日忙しくて、銭湯の背景画だけではなくて、デパートのシャッターとかトラックの車体などに宣伝用の文字も書きましたよ」。

「元々、壁面広告の場所を無料で貸してもらう代わりに、広告代理店は背景画をただで描いていました。描くのは自社で抱える背景画絵師たちでした。絵はがきなんかを参考にして、あとは自由な発想で描いていましたね。今にして思えば、おおらかな時代だったんですね」と、丸山さんは話します。

やがて、背景画は商売として成り立つようになりました。丸山さんも45歳で独立。電話で依頼を受けると、ペンキやはけ、ローラーやはしごなどの商売道具をつんだワゴン車を自ら運転して現場に向かいます。作業の足場を組んだり、浴場を汚さないようにシートなどでおおったり、準備だけで1時間半ほどを費やします。

作業は時間との勝負です。銭湯は夕方3時から4時くらいに営業を始めます。丸山さんは朝7時には現場に入り、準備ができると、チョークで下絵を描きます。「背景画はグラデーションが命」と言い切る丸山さん。7色のペンキを自作のパレットの上におき、状況に応じて混ぜ合わせて微妙な色合いを出します。昔ははけでしたが、今はローラーで直接、壁に塗ります。

年々、銭湯は少なくなっています。絵師の仕事も減り、最盛期には数十人いた都内の絵師も、今では兄弟弟子の中島盛夫さんと二人だけです。しかし、近年の昭和ブームも手伝って、メディアで取材を受けるようになると、それをきっかけに新たな方面から仕事を頼まれるようになりました。

「テレビの取材を受けたら、自宅の風呂場に描いてほしいという電話がたくさん来たのです」。さらに、高齢化社会を反映してか、5~6年ほど前からは、地方の老人ホームや介護センターの浴場での仕事が増えています。ほかにも、イベントのトークショーに招かれたり、作品展開催を申し込まれたり、現場以外での活動も増えました。

丸山さんが描いた背景画の総数は1万点以上。銭湯の壁はおよそ、横幅が13メートル、高さは5メートルから10メートルです。大きな「キャンバス」を相手にきびしい肉体労働をする一方、細やかな技術も要する仕事ですが、高齢になっても続けられている現状に不満はありません。「天職だと思っています。銭湯が減ってきて、後継者がいないことはさびしいですけどね」と、丸山さんは微笑みます。

写真提供:マルヤマ工芸、丸山清人 Tel: 042-573-1852


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