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[2014年7月号掲載記事]
201407-3
万インターナショナル
東京・六本木にある万インターナショナルには、着物の生地で作ったドレスや、帯地と革を組み合わせたバッグなどが並んでいます。2010年に軽井沢で会社を立ち上げ、代官山に店舗を設けました。その後、海外の人にも着物の生地が持つ魅力を知ってほしいと、外国人にもアクセスしやすい六本木へ1年前に移したのです。
代表取締役の村上裕子さんはかつてアパレル業界で働いており、洋服が生活の中心でした。約10年前、ご主人の薦めで着物のことを総合的に勉強できる学校に通い始めたと言います。最初はたたみ方すらわからず、着付けの勉強から始めましたが、その後染色など着物のことをより深く学ぶようになります。
着物のことを知れば知るほど「この伝統的な技術は残していかなければならない」という思いが強くなっていきました。しかし、若い人にとって着物は値段が高いイメージがあり気軽に手に取れるものではありません。村上さんが着物を学ぶ姿を見て、ご主人が事業として展開することを提案しました。そこで多くの人に、着物にふれる機会を増やそうと、着物の生地を商品にして新たな価値をつけて販売することにしたのです。
村上さんは着物を着ること自体を楽しんでもらえればそれが一番だと言います。しかし、「着物の何を残すべきなのかと考えた時に、世界中で日本にしかないその色彩や柄を残すべきだと思ったんです」。そこで着物そのものの形にはこだわらず、日本の四季を表現した柄や、天然の染料が生み出す繊細な色彩をドレスやバッグに生かしているのです。
着物を洋服に作りなおしている店は他にもありますが、和裁の手法で仕上げているのがほとんどだと村上さんは見ています。和裁では平面的に生地を裁断するので、洋服の形に仕立てても体型に合った魅力的な仕上がりにはなりません。万インターナショナルでは幅30センチと洋服用の生地よりも狭い着物地を立体的に裁断することにこだわっています。細かく柄合わせをし、魅力的な商品として新しい価値を生み出そうとしています。
ドレスに仕立てる場合、基本的にはオーダーメイドで値段は16万円からと安くはありません。しかし「着物の柄は昔のものでも流行遅れになったりはしません。一度作ってもらえれば次の世代に自慢できるものになるはず」と村上さんは自信を持っています。
着物離れが進んでしまった理由の一つに、着物を着る機会がないということもあります。そこで村上さんは月に4~5回、着付けサロンを開催しています。参加者は着付けを習った後、着物を着て六本木近くの店で食事を楽しむことができます。英語での対応も可能なため、口コミで外国人のお客も少しずつ増えてきました。
万インターナショナルの「万」は数が多いことを表す文字です。村上さんはこの文字に、着物を生み出した自然と人の八百万の力(多くの力)への感謝を込めました。しっとりと肌になじむ絹で織られた着物地にふれれば、そうした多くの力によって生まれた着物の魅力を感じることができるでしょう。
万インターナショナル
文:市村雅代

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