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都会に残るレトロな風情 ― 新宿ゴールデン街

東京で外国人に最も人気のある街が新宿だ。新宿にはいくつもの顔がある。高層ビル群のビジネス街、五つのデパート、歓楽街の歌舞伎町、カップルのためのラブホテル街、ゲイ・レズタウンの2丁目、緑豊かな新宿御苑などだ。中でも、最も神秘的なのがゴールデン街。

レトロな雰囲気が漂うこの街には、平均3~4.5坪の小さな飲み屋が200軒前後、ひしめき合うように並んでいる。1958年に売春防止法が成立するまで、このエリアは売春地帯として知られていた。

ゴールデン街には、昔ながらの和風な飲み屋、ジャズバー、R&B・ロックバー、カラオケが歌えるバー、シャンソンバー、ロシア民謡やロシア料理が楽しめるロシアンバー、ラーメン屋、そば屋、焼き鳥バーなどがある。

近年のトレンドとしては、インド・中近東をモチーフにしたバー、フラメンコバー、ナースをコンセプトにした医療バー、メイド姿の女性が応対してくれるメイドバー、ミステリーやホラーをコンセプトにしたバー、囲炉裏のあるバー、沖縄がテーマのバー、常に着物姿で迎えてくれる元女優のママがいるバーもある。ユニークなバーはこれだけではない。日本のボードゲーム、囲碁好きなマスターが経営する囲碁が打てるバー、また競馬好きが集まる競馬バーなどもある。

ゴールデン街は、作家、メディア、演劇、教育関係者など文化人が多く集まる飲み屋街として知られている。名の知れた文化人の常連客もいる。お客同士が文化論を語り合うこともしばしばだ。ゴールデン街はママと呼ばれる女性が経営するバーが多い。名物ママも少なくない。

1960年創業の老舗バー「花の木」のママ、広田和子さんは、気さくで知的な女性だ。男女の話から時事問題まで、何でも話せる。どんなお客にも平等に接し、カウンターに並んで座るお客同士を、絶妙なタイミングで紹介する。紹介されたお客同士は名刺交換をし、話に花を咲かせる。

ゴールデン街に通って30年、編集の仕事をする小林幸雄さんは、「『花の木』のママは親しみやすく、何でも話せる人なんでね、つい夜になると足が向くんですよ。ここで色々な人に出会いました。通い出した当初は他の店にも行きましたけどね、今はここに定着しています」と話す。

ゴールデン街には、海外からの観光客の他、常連の外国人客もいる。友人に連れられてゴールデン街を訪れたという大学教授、ジェイムズ・ノートンさん(アメリカ人)は「ゴールデン街は危ないと言われていて、僕自身も怪しくて安っぽいところだと思っていました。でも、来てみるとインテリな人たちにも会えるし、おもしろくてユニークな場所だと思いました」。

イギリス人の学生、トーマス・ハミルトンさんは「最初は来るのをためらっていましたが、イギリスのパブと雰囲気が似ていることがわかり、楽しめました」と話す。

若い世代はどうだろう。バー「ハーメルン」には、白いシャツと黒いベストとパンツに身を包み、短髪オールバックでシェイカーを振るママ、杏子さんがいる。木造の建物の雰囲気を生かしたシックで落ち着いたバーだが、若いお客も入りやすい店だ。カクテルやウィスキー、バーボン、焼酎など一通り飲め、ママと気さくに会話も楽しめる。

「ハーメルン」の常連客、星野隆さんは、「1次会のあと、ちょっと飲み足りないという時に、2人か3人で気軽に来られるところがいいですね」と話す。地方出身の池田洋二さんは、「上京して淋しかったけど、ゴールデン街に通い出して、東京生活も楽しいな、と思えるようになりました」と。

近年は、ゴールデン街の魅力にとりつかれ、店を出したいという若い人も増えた。しかし、不動産屋で待ちリストに名前を載せても、「借りられるのは何年先になるかわかりませんよ」と言われ、止む無く諦める人も多いという。

ゴールデン街のお店の料金は、他の地域と比べて安いところが多い。初めての人には入りづらいようだが、ほんの少し勇気を出して店の扉を開いてみると、そこは、楽しい場所だということがわかるだろう。

新宿ゴールデン街
www.goldengai.net/

(2009年2月号掲載記事)

 

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