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伊勢参り ― 日本の聖地を訪れる

日本には、かつて精神的よりどころとして巡礼者がお参りした神聖な場所がある。それは名古屋から南へ100キロほどにある伊勢市(三重県)にある。一般的に 伊勢神宮と呼ばれ、古代から神宮の総本山として国民に崇められてきた。ここは、日本の神話に登場する天照大神が祀られている。天照大神は、太陽を神格化し たもので、皇室の祖先とされる。

表玄関というべきJR伊勢駅を下車すると、駅のすぐ前から内 宮行きのバスが出ている。15分ほどで着くが、駅から内宮まで石灯籠が延々と続く。バスの終点が伊勢神宮の入口だ。大きな鳥居(神社の門)をくぐり、木造 の橋を渡るとそこには緑あふれる別世界が広がっている。本殿は、玉砂利の参道を10分ほど歩いたところにある。

樹齢数百年と思われる巨木が、神聖で神秘的な雰囲気をかもし出している。途中に式典などが行われる神楽殿があるが、そこを通り過ぎると行き止まりの本殿にた どり着く。正確にはそこは本殿へ通じる門だ。参拝者はそこにおさい銭を入れ、お祈りをする。中の本殿へ入ることはできない。

しかし、門の脇から本殿を覗き込むことはできる。皇室の祖先を祭る由緒ある神宮としては意外と質素な造りだという感想を持つだろう。本殿は、釘を一切使わな い工法で作られることで知られている。現在の建物は2013年に隣の敷地に立て替えられる。本殿は現在の場所と交互に、20年ごとに建て替えられる。

江戸時代へタイムスリップ
境内の外には、江戸時代(1603~1867)にタイムスリップしたような「おかげ横丁」がある。ここには、伊勢うどんや伊勢海老などの名物を食べること ができる店や、餅菓子で有名な赤福をはじめ、特産品を売る店が並んでいる。また、さまざまな大道芸が競い合う一方で、金魚すくいや射的などもあり、みんな が楽しんでいる。

このおかげ横丁の一角に参宮歴史館「おかげ座」がある。館内には江戸時代のお参りの様子がわかるように、伊勢の街並みが縮小サイズで再現されている。その 頃、「伊勢参り」は大ブームで、全国から参拝者が伊勢を訪れた。その数は、日本の人口の一割以上になった年もあるといわれる。

この時代、女性は自由に旅することができなかったが、伊勢参りだけは特別に許可された。旅にはお金がかかるが、それを可能にしたのは「お伊勢講」といわれる 制度だった。仲間がみんなでお金を出し合い、くじ引きで参拝者を決めた。くじに当たったものはみんなの代表として参拝した。

伊勢参拝者は街道の人たちから、食べ物や草履、お風呂などを提供されたという。庶民にとっては一生に一度の夢の旅だった。参拝が終わると、飲み食い、見世 物、女遊びをするなど、かなり羽目をはずしたようだ。江戸の町人の伊勢参りを描いた十返舎一九の「東海道中膝栗毛」は、当時、大ベストセラーとなった。

古代の日本への旅
当時、江戸(現在の東京)から伊勢までは徒歩で約30日かかった。現在は、3時間ほどで行ける(東京-名古屋間を新幹線、名古屋から伊勢まではJR、また は近鉄の特急を利用)。近鉄利用の場合はJRの駅に隣接する宇治山田駅、または、内宮により近い近鉄五十鈴川駅で下車する。そこから内宮行きのバスが出て いる。

伊勢への訪問者は老若男女さまざまで、海外からの観光客もいる。伊勢神宮には、内宮と外宮がある。古来からの習わしでは正式には外宮を参拝してから内宮を参 拝する。外宮へはJR伊勢市駅から、歩いて5~7分で行ける。内宮と同様、深い緑に包まれ、静寂な世界が広がっている。伊勢参りは古代日本への旅でもあ る。

(2008年9月号掲載記事)

 

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