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精神的、かつ文化的シンボル――富士山

富士山ほど日本のシンボルとなりえるものはない。山梨県と静岡県にまたがっており、高さ3,776mと国内で一番高く、東京からでさえも見ることができる。

富士山が日本に与えた影響は計り知れない。伝説的な浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849)など数多くの芸術家や詩人の創作意欲をかきたててきた。北斎の 版画シリーズ「冨嶽三十六景」には、象徴的な「神奈川沖浪裏」の富士山も含まれている。そこには、遠くに雪をかぶった富士山と前面に巨大なあわ立つ波が描 かれているが、おそらく日本の最も有名な絵葉書のイメージといえよう。

富士山が与える影響力 の中心をなすのは、霊的な力だ。富士山の頂上は昔から神聖なところとみなされ、それにまつわる伝説はたくさんある。峰は火の神様と、神道の木の女神が宿る ところとして崇められてきた。一方仏教では、すべての人に光明を与える仏陀、大日如来のいるところとされている。15世紀以来富士山は巡礼地として有名に なっていたが、明治時代までは女性の入山は禁止されていた。

富士登山
初めて富士山に登ったのは無名の僧侶で、663年といわれている。一方、頂上に登った初めての外国人は、英国外交官のラザフォード・オールコックで 1860年のことだ。毎年7月1日から8月26日の公式登山期間中に、多くの登山者が先人に続いて富士山に登る。

シーズンの開幕を示すため、毎年静岡県の富士宮でイベントが行われる。まず夜更けに浅間神社の湧玉池で身を清めることから始まり、それから山開きの宣言へと続く。

富士登山に興味のある人には、いくつか心にとめておくべきことがある。まず、登山口と山頂の温度差は20度前後。日本の夏は暑いが、それでも8月の富士山頂 の明け方の気温は、凍えるほど寒い。長袖のシャツとズボンで登り、標高の高いところ用にセーター、手袋、厚手の靴下を持参するよう地元の観光局は勧めてい る。

観光局は、雨具を持っていくことも勧めている。傘は持ち運びに不便であり、他の登山者の 迷惑になるため置いていく。自分に合ったハイキング用の靴、サングラス、懐中電灯も持っていくほうがよい。用具のアドバイスのほかに、観光局は登山者たち が守るべき大切なルールを教えている。ゆっくり登り、短い休憩をひんぱんに取ること。具合が悪くなったら、山小屋で長時間休むか、登山を中止すること。最 後に、自然環境を守るため、どんなごみも後に残さないこと。

残念なことに、登山者の多くが富 士山にガラクタを捨てていく。富士山は昔のように日本人にとって大切でなくなったようだ。心無い登山者により山のあちこちにごみが捨てられていることが、 富士山を世界自然遺産に登録できなかった理由となった。遠くから見る富士山の美しさは、申し分ないが、その山道は人気がゆえに傷跡を残している。しかしな がら、富士山を世界文化遺産に登録する計画がある。日本人の心に富士山の大切さを知らしめることになるこの要望は、不当ではないように思われる。

行き方
ほとんどの人は富士山の5合目から登る4つのルートのいずれかから出発する。山梨県側の5合目にある人気の河口湖(標高2,300m:山頂へ5~7時間) には、東京の新宿からバスで行くことができる。所要時間は2時間半、料金は2,600円。登山時期には一日に6回バスが出る。

静岡県側の次の駅からも登山を始めることができる。須走5合目(標高2,000m:5~8時間)、御殿場5合目(標高1,400m:7~10時間)、富士宮5合目(標高2,400m:4~7時間)。

(2008年8月号掲載記事)

 

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