■ひらがなタイムズ・アーカイブ
今月のセレクション③
街の再生にかけた娘たちの物語
フラガール(李相日監督)
実話を基にした感動の名作。日本の主要な産業であった炭鉱の衰退がはっきりしてきた1965年、常磐炭鉱(福島県いわき市)で大幅な人員削減をはじめようとしていた。そして街を救うために、テーマパーク「常磐ハワイアンセンター」を作ろうというプロジェクトが持ち上がった。この背景には前年、日本で海外旅行が自由化され、海外旅行への気運が高まっていたこともある。ハワイは日本人の憧れであったが、高嶺の花だった。
センターの目玉となるのが、フラショー。炭鉱の娘にフラを教えるため東京からまどかがやってくる。かつての花形ダンサーで、気位が高く、わけありそうな女性だ。娘たちはへそを出してお尻を振るのを恥ずかしがり、募集に応募してきたのは数名。その一人が主人公の紀美子だ。しかし、炭鉱で生きてきた母は娘がダンサーになることに大反対。炭鉱の住民も冷ややかで、プロジェクトは前途多難だった。
レッスンを始めるが、娘たちにはまったくダンスの経験がないことが明らかになる。まどかはあきれてしまうが、彼女たちの熱意に、次第に情熱をもって教え始める。それはまどか自身の再出発でもあった。応募者も増え、教師と娘たちの信頼関係は次第に強固なものになっていく。その間に紀美子の親友との別れや、まどかの借金話などが盛り込まれる。そして、福島弁が見る者に親しみを感じさせる。
開園を控え、ダンサーを鍛えるため地方公演が行われ、娘たちにも徐々にプロ意識が芽生えてくる。そんな矢先に、一人のダンサーの父親が炭鉱事故で亡くなる。その娘の意志で予定されていた公演は続けられた。だが街に戻ると、彼女が父の死に際にいなかったことで住民はまどかを批判する。責任をとり列車で帰京するまどかを必死で引き止めようとする娘たち。泣かせる場面の一つだ。
開園までの試練はまだ続く。だが、娘のひたむきな姿に紀美子の母親はついに娘を許し、協力する。住民もそれに加わる。開園の日、娘たちは満員の観衆の前で鮮やかなダンスショーを繰り広げる。観衆は大喝采。紀美子の母親も娘に精いっぱいの声援を送る。
主演は松雪泰子(まどか役)、蒼井優(紀美子役)。キネマ旬報ベストテン・邦画第1位。日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞他、多数の賞を受賞。シネカノン制作・配給。近年の日本映画の最高傑作との声も高い。英語字幕DVDあり。
(2009年2月号掲載記事)
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