日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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演歌を歌い上げるアメリカ人歌手――ジェロ

今、一人のアメリカ人演歌歌手が日本で爆発的な人気を呼んでいる。彼の名はジェロ(本名:ジェローム・ホワイト・ジュニア)。アメリカ・ピッツバーグ生まれ。2008年2月のデビュー以来、あっという間に人気に火がつき、TV、ラジオ、雑誌でひっぱりだこだ。最近では、TVコマーシャルにも登場している。

演歌は、独特の哀愁をおびた曲調と詩的で深い歌詞が特徴で、これまで主に中高年層に支持され、昭和の時代に花開いた。着物を着て悲しい心情を歌い上げるという風情が一般的な演歌界において、ヒップホップのいでたちで演歌を歌うジェロの出現は、日本人に大きな衝撃を与えた。

彼の人気は、ルックスや独自性にもあるが、その歌唱力に裏付けられている。耳に心地よい声は聴いていて飽きない。また、きれいな日本語と歌の技術は、歌詞の心情を的確に伝えている。

生まれも育ちもアメリカのジェロが、演歌に憧れプロの歌手になった背景には、彼のおばあさんの存在があった。ジェロのおばあさん、多喜子さんは横浜生まれの日本人。第二次世界大戦後、横浜で米国兵士のレナードさんと結婚し渡米した。ピッツバーグの家で多喜子さんは、日本を懐かしみ、いつも演歌を聴いていたという。

おばあさんが大好きだったジェロは、幼い頃から彼女の聴く演歌に親しんでいた。歌詞の意味はわからないが、おばあさんに喜んでもらおうと真似をして覚え、歌っていたという。ジェロは演歌の女王といわれる故美空ひばりが好きだ。「何を歌っても気持ちが伝わってくる。言葉がわからなくても聴きほれてしまいますね」。

多喜子さんは、アメリカの家に仏壇を置き、日本人形などを飾り、靴を脱ぐ日本風の生活を送っていた。しかし、時には日本を思い出して涙を流すこともあったため、ジェロはあまり日本のことについて触れなかったという。それでも日本に興味を抱いていたジェロ。本格的に日本語の勉強を始めたのは高校生の時だった。

ちょうどその頃、日本で日本語スピーチコンテストがあり、アメリカ代表で出場することになった。習いたての日本語で発表したのは、「僕のおばあちゃん」。それは、戦後、渡米して苦労した多喜子さんの話だった。この頃、ジェロは好きなヒップホップダンスの練習をしていたが、実は、密かに演歌歌手になる夢を抱いていた。

その後、ピッツバーグ大学へ進学し、コンピューターを専攻した。そして大学3年生の時、交換留学生として2度目の来日を果たす。3ヶ月間の滞在だったが、日本語も上達し友達もできた。その時、彼の目標は確固たるものとなった。「自分のやりたいことがすべて日本にある、と悟ったのです」と、ジェロは当時を振り返る。

あたかも突然表舞台に現れたかのように見えるが、念願のデビューに至るまでには、5年の歳月を要した。日本で英会話の講師やコンピューターエンジニアの仕事を経て、カラオケ大会や素人歌番組などに参加し、2005年レコード会社の目に留まりスカウトされる。デビュー後は地方を回りライブ、キャンペーンを展開した。

デビュー曲のタイトルは「海雪」。愛する人を追って旅に出るヒロイン。辿り着いた先は凍える海の岸壁。降りしきる雪は海に消え永遠に積もらない。「海雪」はシングルで25万枚を突破、ネット配信でもダウンロード数が50万を超えた。

演歌は日本人の魂を歌うものだ。外国人に日本人の心がわかるのかと、ジェロはしばしば問われる。「人間なら、すべての人に通じます」とジェロは答える。演歌歌手になるきっかけを作ってくれたおばあさんは2005年に他界した。「元気なときにたくさん話ができてよかったです。お別れは言えなかったけれど、日本でがんばっていることを、おばあちゃんは喜んでくれていると思います」と彼は話す。

寝る時間もない毎日。しかし、「とても充実しています。憧れの演歌歌手たちと同じステージで歌えるなんて、これ以上の幸せはないですね」とジェロは言う。そして、「夢は叶う、と本当に思います」とも。ジェロを見て小学生はかっこいいと言い、年配の人たちはしっかりしていて印象が良いと言う。

3度目の来日で日本に住み始めた頃は、通勤電車の混雑にうんざりしたという。だが、「日本人は本当に親切。そして日本は住みやすい国です。おばあちゃんの影響か、生活習慣も違和感はありません。何より人と人とが尊敬しあう文化が好きです。今後も日本で基盤を作りたい」と語った。

好きな日本語は、「“ちんぷんかんぷん”。響きがいいから」。ジェロは流暢に日本語を話す。日本語で夢を見るほどだ。「日本に来たら日本のことを大切に思ってほしいです。最小限でもいいから日本語を勉強して、自分の好きな分野で――僕の場合はダンスでしたが――友達を作れば生活も楽しくなるはず」と日本での生活の秘訣を話してくれた。

ジェロ公式サイト
www.jvcmusic.co.jp/jero/

ビクターエンタテインメント株式会社
www.jvcmusic.co.jp/

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