日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
Hiragana Times Japan-Behind the Scenes
 
HOME日本をもっと知るエンターテイメント/スポーツ
日本をもっと知る - エンターテイメント/スポーツ

街を野外美術館に変身させるストリートアートブーム

東京のなかでも3本の指に入る繁華街であり、若者の街として知られる渋谷。街の壁やシャッターには、数多くの落書きがある。それを「ストリートアート」として生まれ変わらせ、歩きやすく明るい通りにしようと、地域の街づくり団体が動いた。駅近くの壁に年一回新たな作品を描くことにし、2007年3月、「春の小川」と題する壁画が完成した。

第一回の作品を手がけたのは日本デザイナー学院の椎名瞳さんと34人の仲間たちだ。実際の作業の流れは次の通り。まず照明を設置、通りの清掃、足場を組み、落書きされても拭き取りやすいようにするため下地を塗る。次に方眼線をひき、マジックで下絵を描く。色を作り、ようやく筆で塗料を塗っていく。

「原画では構成がとれているように見えても、実際壁に描いてみると余白が出てバランスが悪くなってしまい苦労しました」と椎名さん。机に向かって描くのと壁に向かって描くのとでは力の入れ方が違うため、腕も疲れる。課外活動として約2ヶ月かけて完成させた壁画「春の小川」は、バスに乗っていた人がわざわざ降りて見に来てくれるほど上々の出来あがりだった。

ところが完成から約4ヶ月後、落書きされた。夜間はシャッターが降りる地下道の絵は無事だったが、通り沿いはひどい状態だった。椎名さんと一緒に描いた柳沢さんと更科さんは話す。「なんでわざわざここに……と思います」。「苦労した細かい花びらのところなど、がんばったところが全部消されてしまいました」。

結局、落書きを塗りつぶし再度描くことになった。作業には、地域やボランティア120人が参加した。なかには有給休暇をとった人もいたという。「当初40名と考えていたのに嬉しい誤算です」と、渋谷駅近くに祖父の代から暮らしている木津秀幸さんは話す。

「壁に絵を描くのは楽しいですよ。これをきっかけに友達が増えました」と柳沢さんは話す。「道行く人が『上手ね』と声をかけてくれたのと、修学旅行中の中学生の「すげえ!」という声が嬉しかったです」と更科さん。一人のときも黙々と修復作業を続けた町田さんは「終わったあと皆で喜びを分かち合えることが壁画制作の魅力です」と笑った。

ストリートアートは落書き防止、ひいては犯罪防止効果にも役立つ。割れた窓を放置しておくと、管理する人がいないと思われ、それが治安の悪化につながるという「割れ窓理論」に基づいている。ストリートアートへの関心の高まりで、地域と若いアーティストが協力した壁画が、今後さまざまな場所で見られるに違いない。

■記事リストへ戻る


Copyright (C) 1998-2008 YAC Planning Inc. All rights reserved