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ニューヨークで折紙セラピーを施す日本人

アート・セラピスト 小林 利子さん

物に溢れた物質的環境、電子情報化社会の到来、テロリズム……。様々な要因によりストレス社会といわれる現代。人々は癒しを求め、セラピーに助けを求めている。日本ではアロマ・セラピー、フット・セラピー、ヨガ・セラピーなどが主流だが、欧米に目を向けると、精神医療に用いられるアート・セラピーが注目されている。

ニューヨーク、ブロンクス精神医療センターでアート・セラピストとして働く小林利子さんは、1999年に単身で渡米し、2002年にニューヨーク大学でアート療法の修士号を取得した。54歳の時だ。以後、アート・セラピストとしてN.Y.に滞在し活躍している。

小林さんは、他の担当医師たちと患者に関する様々な情報交換をしながら、チームワークで総合的に治療する。「レイプや幼児期に受けた心の傷、トラウマなどで、ひどいケースの人は話すことさえ困難です」と小林さんは精神医療の現場を語る。

「小さい頃から絵、折紙、習字、陶芸など、モノを作るのが好きでした」。小林さんは、子育ての忙しい時期でも合間をみて、捨てられたゴミを再利用して創作するリサイクル・アート展を開催してきた。常にアートに関心を抱いていた小林さんは折紙を利用した「エンリッチメント折紙療法」と呼ぶユニークな治療法を編み出した。

患者に折り方の基礎を教えて、個性を反映したユニークな折紙を作ってもらう。「自分の作ったものが、自分とは別のものとして目の前に存在する。それを認識することは、自分の存在の確認となるのです。現実を把握することになるからです」。情緒的にリンクできるようなものを対象に折ることができれば、出来上がりの感動も大きいと小林さんは言う。

小林さんは、様々なアート・プログラムを実施している。親が働いている子供たちが放課後に集まるアフター・スクール・プログラム、N.Y.同時多発テロ跡のグラウンド・ゼロに隣接する高校、低所得家庭が多いローワー・イースト・サイドの子供たちなどが対象だ。

「非行を繰り返していた青年の母親から感謝の言葉をもらった時はとても嬉しかったです。習った折紙で箱を折ってくれた。初めて役立つものを作ってくれたと喜んでいました」と小林さんは回想する。なかには、作るのが嫌いという患者もいる。「そんな時は、自由にやってもらうんです。自分から動き始めるまで待ちます」。

離婚、そして50代でアート・セラピストに
ここに至るまでの小林さんの道のりは、順風満帆ではなかったという。主婦をするかたわら医療コーディネーターとしてボランティア活動をしたり、創作活動に励んだりしていた小林さんは、「自分なりの仕事をして自立したい」という気持ちを強く持っていた。子供に手がかからなくなった頃、離婚を決意し、新たな道を歩むことになった。

その頃、小林さんはアーティストとして展示会の企画やワークショップも手がけていた。それを知った赤新月社から、紛争地域のパレスチナで心身ともに障害を持つ子供たちや若者たちに、リハビリの一環としてアート・ワークショップをして欲しいとの依頼があった。以後、それを引き受けた小林さんは何度もパレスチナを訪れた。

海外へ何度か赴き、アートを通して様々な人々と触れ合った小林さん。モノづくりが人に与える影響の大きさを感じていた。そんな時、留学していた娘さんを訪ねてN.Y.へ遊びに行った。そこで、アートを医療に使うための勉強ができることを知り、自身も留学を決意する。しばらくして娘さんは日本に帰国したが、小林さんは残った。

「自分にできるのかなと不安になり、家庭のことなど考えることが沢山あって大変でした」と苦労も多かったという。現在はマンハッタンのアパートからブロンクスの病院へ通う充実した毎日を送っている。

創造的な活動の中には、癒しの効果がある。小林さんいわく、「アート・セラピーは言葉に出せない問題を見つけ出していく診療方法なんです」。ニューヨークなどの大都会では、アート・セラピーなどの精神セラピーに対する需要は大きい。昨今は日本でも、心のケアが社会問題となっている。今後、アート・セラピストの活躍の場は、日本でも増えていくだろう。

小林さんのサイト
www.imagefactoryt.com/

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