日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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能に魅せられたフランス人研究者

ナタリー・カヴァザンさん

「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり」。この美しい言葉を残したのは、室町時代初期の能役者、世阿弥(1363〜1443)だった。能の修行や奥義など演劇論に関して幅広く記した能楽書「風姿花伝」の作者でもある。役者が年齢を積むそれぞれの過程には、その時々に咲く花があると言い伝えた。能は、日本に残る伝統芸術の中でも、一般人が足を踏み入れにくいように思われている。

能を極めるには厳しい稽古や所作、唄や舞いの様々な技法が要求される。そんな能の世界に飛び込んでいった外国人がいる。地理学博士で、現在早稲田大学の国際情報通信研究センターで客員研究員をしているナタリー・カヴァザンさんだ。彼女は研究室での日常生活の他に何か違った経験をしたいと思っていた。展示会に出かけたり茶道に参加したり演劇を鑑賞したり、文化を通じて日本を知ろうとした。千駄ヶ谷の国立能楽堂で初めて能をみたのは数年前のことだった。

ナタリーさんは「日本人や日本の伝統文化の歴史をもっと知りたかったのです」と言う。そこで出合ったのは、美しい衣装、素晴らしい音楽、神秘的な舞台の雰囲気、そして荘厳な舞いだった。「素晴らしい舞台にただ、ただ感動しました」。ナタリーさんは能の魅力に引き付けられ、虜になってしまった。

3年半ほど前、ナタリーさんは早稲田大学の坪内博士記念演劇博物館の図書室で、能の公演と稽古のチラシを見つけた。その翌朝、観世流家元、勝海登氏に電話をかけ、恐る恐る入門したいと告げた。家元は彼女が外国人と知った上で、またその熱心さに「では、稽古場に来てください」と言った。ナタリーさんの入門はすぐに決まった。「本当に心の広い人間的に大きな方なんです」と、家元を尊敬している。

ナタリーさんは15年前、茨城の筑波大学で1年半、経済地理学の研究をするために初来日した。最初は不慣れな日本での生活に困難も多かったが、帰国前には馴れたという。フランスへ帰った後も、日本とよりよい関連がもてる研究を続けたいと願い、10年前2度目の来日を果たした。しかし、ナタリーさんには研究と日本語のレッスンに追われる日々が待っていた。

そんな中、観世流と勝海氏に出会う。「私にとって能は間(次の所作へのタイミング)、場、時間が重要な要素だと思っているんです。日本人の“間”の考え方、捉え方に私はとても興味を惹かれます」とナタリーさん。「始めた頃は、何度も挫折しそうになりました。でも、一度何かを始めると終わらせなければ納得できない性分なんです」。

ナタリーさんは忙しい研究の中、月に3回能の稽古に通い、年に2回能舞台に立つ。専門の研究の他にも能を通してフランスと日本の文化交流イベントを手がける。日本の伝統文化の長い歴史に思いを馳せ、これからの研究材料にも役立てたいと願っている。彼女の好奇心の旺盛さ、見識の深さは、さらなる活躍につながるだろう。

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