日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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東京のレコードは回り続ける

バー「オクトーバー」 遠藤広幸さん

タバコに火をつけ、お客にスコッチのダブルを出し、ギネスを少しつぎながら、遠藤広幸さんはレコードをデッキの一つに滑らせ、そっと針を下ろした。ジミー・ヘンドリックスのリトルウィング――そのギターの音が徐々に小さくなり始めたとき、スイッチを切り、25年後のブラーのパークライフに変えた。

高円寺駅から裏道を入った路地に、おもにカウンターだけの遠藤さんのバー、「オクトーバー」がある。遠藤さんは、1960年代のガレージやフリークビートからおかしなアル・ヤンコビックまでに及ぶジャンルのシングルとLPレコード数千枚のコレクションがある。その中には、遠藤さんのコレクションの中でも最も風変わりな、中国人パンクグループによるセックス・ピストルズのカバー「アナーキー・イン・ザ・UK」など貴重なものも含まれている。 「彼らは英語の発音ができないのです」と、遠藤さんは明らかに共産主義に影響されたレコードジャケットを掲げながら言った。「クレイジーだ」。

オクトーバーは東京で活気づいているバーのひとつである。そこは、いいレコードを聴きながら落ち着ける場所を求める人々の安息所のような役割を果たしている。一方で、東京にある数多くのレコード店と共に、レコードへの関心とコレクションへの興味をかきたてているようだ。

レコードを買うとなれば、「東京はレコード収集家にとっては夢のような場所です」と、オクトーバーの常連客でコレクターのカーク・ダンビーさんはカウンターに座り、ギネスビールをちびちび飲みながら言った。「日本人はレコードの手入れがすごくいいので、すばらしい状態で見付けることができます。お店に関しては、私が欲しい欠番のレコードを探すためならどこへでも行きますよ。新宿、渋谷、池袋、高田馬場、三鷹、吉祥寺、高円寺、どこにでもすばらしいお店があります。お店の商品に対する評価は正確で、値段もまともです」。

ダンビーさんや遠藤さんのようなコレクターにとっては、インターネットも格好の道具だ。「最近はほとんどのお店が、オンラインでつながっていて可能性は無限です」と、ダンビーさんは言う。お店で買おうがオンラインで買おうが、レコードの価値を決める要素は同じである。「レコードの価値の一部は、めずらしさや保存の状態、そのレコードに人がどのくらいの情熱をそそげるかによります。何年も店に並べられている非常にめずらしいレコードを見たことがあります。誰も買おうとしないのです」。

しばしばレコード収集はニュースになるが、それは、めずらしさに大金を出す人がいるからである。一昨年イーベイで売られたセックス・ピストルズのA&M回収バージョン、ゴッド・セイブ・ザ・クイーンは一枚で1万2千ポンド(約288万円)以上した。一方、ビートルズになる前のクオリーメンのアセテート盤・シングルカットは10万ポンド(約2,400万円)ほどだった。コレクターにとっては、そのような行き過ぎはレコード収集の精神に反するとダンビーさんは言う。「何年後かにレコードの値段が上がるという投機だけでレコードを買っているのなら、目的を見失っています。棚に飾るためにレコードを買わないでほしいですね。聞くためにそこにあるのですから」。

遠藤さんは、パークライフをジャケットに戻し、ポーグスのコレクター、カーク・ダンビーさんのためにLP「レッド・ローゼズ・フォー・ミー」をバー全体に聞こえるようにかける。次にカウンターの隅のほうにいる客からのリクエストに答えるため、彼のコレクションに手をのばし、オクトーバーのレコード愛好家のためにレコードを回し続ける。

オクトーバー
Tel: 03-5306-2924

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