日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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視覚障害者に光をもたらす点訳の女神たち

埼玉県点訳研究会

2005年の中ほどから、毎月Hiragana Timesの発売直後、編集部に女性グループから電話がかかってくるようになった。記事中の誤字を指摘するものだ。編集部では数名が校正にあたっており、間違いはほとんどないはずだが、それでも、毎月2〜3の指摘をされる。その鋭い指摘にスタッフは舌を巻く。

編集部ではそれが話題になった。ある日、なぜ間違いを見つけられるのかを聞いてみると、彼女達は埼玉県点訳研究会(埼点研)のメンバーで、視覚障害者にHiragana Timesを毎月点訳しているとの説明があった。しかも、日本語と英語の一字一句を点訳しているから、その過程で誤字がわかるのだという。

点字の原理は、一文字が6つの点で構成される。全部で64通りあり、それで、ひらがな/カタカナを表現する。つまり、ひらがなの一文字を6つの点で表記する。英文の点訳では、6つの点が各アルファベットに置き換えられる。この原理は、一文字6ビットのコンピューターの原理と同じといえるだろう。個人差はあるが、1年ほどで習得できるという。

現在の方式の6点点字を完成させたのは、フランスのルイ・ブライユ。3歳で失明し、パリの盲学校で学んでいたときに、指先で凸字の本に触れるとわかることに感激した。それをきっかけに研究を重ね1825年に完成させた。日本でもそれを元に日本語で表す研究が進められ、1890年に東京聾唖学校教師の石川倉次が考案した。

埼点研を設立したのは視覚障害者の伊藤毅氏。伊藤さんは寮母に本を読んでもらい、一生懸命に点字にした。一方では県立図書館などで熱心に点訳の講習会を開いた。講習を受けた現会長の松村雅子さんは、「とても素敵な方でした。伊藤先生を尊敬し、私も点訳を始めました。残念ながら、先生は18年前の列車事故で亡くなられました」と回顧する。

経費はメンバー各自が負担
埼点研のメンバーは140名。各自が月に1?2回集まり勉強会や情報の交換を行うが、普段はそれぞれが埼玉県の各自の地元で講習会を開いたり、点訳の作業をしたりする。点訳作業は大変だ。「15年ほど前までは、点字タイプライターで点訳していたんです」と、武藤治子さんは馴れた手つきで実演してくれた。それ以前は点字板で一点一点を手作業で書いたという。

現在はコンピューターソフトがあり、画面上で書き込めるようになった。完成したデータをプリントすれば、点訳ができあがる。作業はだいぶ楽になった。「問題は費用なんです。あのプリンター1台で107万円もしました。一度に両面印刷できるものだとその倍はします」と松村さん。「その他、本代、紙代、事務費、会場費などの費用もばかになりません」。

埼点研はボランティア団体で、これらの費用はすべてメンバーが分担して支払うという。これほどの社会奉仕をしながら、助成金など公共の援助を受けていない。自ら経費を負担し、時には睡眠不足になりながら、黙々と作業を続ける彼女たちは、視覚障害者にとって女神のような存在といえるだろう。

「本が好き」「子供の手が離れ、自由な時間が持てるようになったから」と、ボランティアを始めた動機を多くのメンバーが言う。「それにしても、自腹を切ってまで、よくやりますね」と言うと、集まったメンバーは、「趣味ですから」「自分のためにもなるんです」「趣味にはお金がかかるんですよ」と、異口同音に笑顔で語る。

ボランティア活動を誇示するわけでなく、社会奉仕を趣味と言い切る彼女たちは点訳を楽しんでやっている。これがボランティア活動の究極の姿なのかもしれない。彼女たちのお陰で、Hiragana Timesが毎月点字で読めるようになった。世界の視覚障害者にも日本を知る窓口ができた。視覚障害者には埼点研メンバーの暖かい心がはっきりと見えるに違いない。

埼玉県点訳研究会
www5.ocn.ne.jp/~saiten/

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