日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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ロマンを追い続ける「東京のドン・キホーテ」人生に賞味期限なし!

定年退職したら、どうするか? 現役でバリバリ働いているうちは、これを想像するのは難しい。生涯学習の大切さが叫ばれている昨今だが、無我無中で働いてきた猛烈人間が、突然開放され、自由を与えられた時、人はどうするのだろうか? 計画のある人はいい。しかし、ついうっかり、未定のまま定年を迎えてしまったら?

「そんな時こそ、留学ですよ!」と張りのある声が返ってきた。「夢が果てしなく、途方もなく広がってしまうんですよ」と語るのは、「東京のドン・キホーテ」を名乗る清水武さん、65歳。定年退職した現在、憧れの「ドン・キホーテ」に始まる「世界文学紀行――名作の舞台を訪ねて」という活動を開始した。

現役時代は新聞記者だった清水さん。「周りの記者たちがみんな英語に精通していたので、じゃあ、俺はスペイン語でも勉強しよう!」ということに。その後、特派員として10年間、パナマ、中南米に駐在した。学生時代は勉強も熱心で、行動的だが真面目だったという清水さんが、陽気で開放的なラテンアメリカ文化に親しむことになり、はまってしまった。

「『定年留学』してみませんか?」(文芸社)を執筆した清水さん。今さら無理、と断念する人たちにアドバイスをしている。スペインなどの国では、年金で1年間大学生活することができるのだ。「健康な限り、定年後こそ動くべき。やりたいことがあるか、行きたいところがあるか、会いたい人がいるか、ときどき点検してみるといいと思います」。

すでに成長している娘さん2人には日本で留守番をしてもらい、奥様を同伴。スペインのマラガ大学で1年間、語学や文化、芸術などを学んだ。休日はクラスの友達を自宅へ招き、留学直前で得たお得意レシピを披露。60歳をすぎて友達や知人がたくさん出来、文化や生活の違いをあらためて体験することはとても新鮮な刺激だったという。

しかし、地元の人たちの、時間に対する感覚の違いには悩まされることも多かった。「ラテンアメリカの人たちにとっては、あくまでも人間が時間の主人。決して時間に囚われないのです」。待たされる、約束が果たされないことは数えきれないほどだ。また、憧れのスペインでスリにあい、落胆したこともある。でもそんな辛い出来事も、豊かな肥しにしている。

「中南米文化の原点は、すべてスペインにある」と清水さんは悟った。小学生の時、みんなで「ドン・キホーテ」の劇をやった。清水さんはドン・キホーテの従者である、サンチョ・パンサを演じたのだが、ドン・キホーテのどこまでも夢を追いかけていく精神に心惹かれたという。以来、この作品に魅了され、再読を繰り返した。「いつかはスペインへ行き、その原点を探りたい!『ドン・キホーテ』を究めたい!」

折しも、2005年は「ドン・キホーテ」出版400周年の記念すべき年だった。それに合わせて清水さんはスペインへ飛んだ。原作者セルバンテス生誕の地や作品にちなんだ場所などを訪れ、親切なスペイン人にも出会った。「ドン・キホーテ」に感動し、その舞台を巡るという日本人に、現地の人たちも感動したようで、有名な地元の新聞社から取材を受けたほどだ。

高齢者向けの講演会や学生向けの講義、紀行文を執筆するなど、清水さんは様々な活動をしている。名作舞台を訪ねるのは、自分自身の充実感とともに、感動を人に伝えたいからだという。定年後の充足感がないと感じている高齢者や、夢が持てない若者たちに清水さんは言う。「少しでも興味があることを一つ見つけて、もう一度勉強することをお勧めします。そうすれば、必ず刺激が向こうからやってきますよ」。

「好奇心、想像力、前向きに挑戦していく姿勢が大事」と清水さん。様々な場面で、ドン・キホーテに生き方を教えられるのだという。「見果てぬ夢」はその後、アメリカの名作巨編「風と共に去りぬ」の舞台を巡る旅へと続いた。そして「赤毛のアン」を訪ねてカナダへ。その次はイギリスへ行き、シェークスピア作品へと続く予定だ。次々と夢が紡がれていく。「病気になんてなれないですよ、作品がたくさんあるからね〜!」

清水さんのサイト「ドン・キホーテの広場」
URL:
homepage2.nifty.com/donky/

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