日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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神風特攻隊員の真実を世界に伝えたい!

「THE WINDS OF GOD - KAMIKAZE」
監督・主演・原作・脚本 今井 雅之さん

2001年9月11日、マンハッタンの世界貿易センターに二機の飛行機が相次いで突っ込んだ。アメリカの新聞は、これを「カミカゼアタック!」と報道した。太平洋戦争末期、敗戦が色濃くなった日本は、若者に爆弾を搭載した飛行機でアメリカ艦隊への体当たり攻撃をさせるため、新たな部隊を創設した――これが「神風特攻隊」だ。

メディアの偏向的報道に対して、神風特攻隊とテロリストは根本的に違うと、声を大にする日本人がいる。今年の8月に上映される映画「THE WINDS OF GOD - KAMIKAZE -」(英語)の監督、主演、原作、脚本の4役を努める今井雅之さんだ。「神風特攻隊員がテロリストと同じように見られていたのには納得がいきません。彼らは民間人を殺してはいない」。

駆け出しの俳優だった今井さんは、特攻隊の生き残りの人たちと話をする機会を得たのをきっかけに人生が大きく変わった。今井さんが25歳のときだった。それまで、特攻隊は天皇陛下のためなら命も惜しまない、勇ましく、ある意味ではクレージーな人たちだと思っていたが、事実は180度違っていた。

「特攻隊は天皇陛下を尊敬していたけれど、実際にはお母さんや家族のために、自分たちが防波堤になって守ろうとしたのです。特攻に行った人も私達と同じ普通の人間だったことがわかりました。彼らは死にたかったのではなく、生きたかったのですよ」。今井さんは時代に翻弄されたこの人達を、ぜひとも作品にしたかった。

「ドラマを書いた頃の私は、オーディションは受からないし、仕事がきてもいい役がもらえない。それじゃ、自分が主役になる芝居をつくってしまえ、と思ったんです」と今井さんは回想する。しかし、「特攻隊と言うだけで、俳優が誰もやりたがらなかった。『右翼だ』とか、『ばかじゃないの』と言われ、劇団の先輩や後輩、仲間から断られました。最終的に舞台に立ったのは私だけで、後はアルバイト、今の嫁さんなど舞台が初めての人ばかりだったのです」と、今井さんは苦い思いをした。

俳優の拒否反応をやわらげるために、台本をコメディ風につくりあげた。88年の初演では3日間で5回の公演を行ったが、最初のお客さんはわずか8人だった。しかし、舞台を見た人達の口コミで、千秋楽のチケットは売り切れた。その後、各地で上演を続けた。海外公演もするようになった。98年には辛口で知られる「ニューヨークタイムズ」が劇評でほめ称えた。そして、99年の秋にはブロードウェイロングラン公演を果たした。

会社には2千円しかなかった
海外公演は英語で行った。「アメリカは演劇の本場ですから、日本語でやるのは逃げだと思ってね。英語はボロクソに言われました。ただ、言葉がつたなくとも気持ちが伝わることだけはわかりましたね」。今回の映画化でも台詞はすべて英語だ。「日本人は字幕スーパーに慣れていますが、アメリカでは字幕を読む習慣がないんです」。今回出演の俳優は、猛特訓を受けて英語のせりふを覚えた。その成果は作品を見れば明らかだ。

この作品は95年にも日本語で映画化されている。売れない漫才師が事故にあい、気が付くとタイムスリップして、神風特攻隊員になっていたという設定だ。今回の英語版では、ドイツ系アメリカ人と日系アメリカ人のコメディアンという設定に変わった。「私は、アメリカ人が傷ついたグラウンドゼロをどうしても撮りたかったんです。いろいろ制限があり、映像にしたドラマは、世界で初めてらしいです」と今井さん。

主人公の二人は戦時中という異常な情況と現代とのギャップ、アメリカと日本の異文化の違いにショックを受ける。現代の眼から見た過去の日本の異常さが鮮明となるが、当時の日本人の眼からは、現代の彼らの行為が異常に映る。この対比が見事に描かれている。

この映画制作について一番辛かったことを尋ねると、即座にお金と答えた。「この制作には2億数千万円かかりましたが、スポンサーが集まらなかったんです。投資方式にしましたが、1,000人に話をしても、応じてくれたのは数名でした。スタッフの管理の甘さもあり、制作費はどんどんあがる。当初の見積りの倍かかってしまい、本当に苦しかった。呪われているのかと思った」。

「今だから笑って言えますが、会社には2千円しかなかったこともあります。飲み屋でやくざ風の人に色紙を頼まれて、10万円もらったときは、本当に嬉しかったですよ。二度とこんな経験はしたくないです」。資金繰りは厳しかったが、制作費は削らなかった。ゼロ戦も本物を借りて撮影した。「よく完成できたと思います。多くの人の協力がなければできなかったことです。奇跡ですね」。

今井さんは言う。「特攻隊がクレージーだったのではなく、戦争がクレージーだったのです」。この作品は、普通の人間が時代という狂気に振り回されてしまう悲しさを世界の人に問いかけている。今井さんの意図は名作「独裁者」を制作したチャップリンに通じるものがある。

2006年8月下旬より全国にてロードショー。舞台版は2006年8月11日より全国ツアースタート。

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