日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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日本とブラジルを結ぶ智の伝道師

カンピナス州立大学機械工学部教授 鈴木カルロス健一

食品の廃棄物が車の燃料に
日系ブラジル人の鈴木カルロス健一教授は25年前に初めて来日し、東京大学の工学部博士課程を修了した。年に1〜2回来日するが、今回はバイオマス(代替エネルギーの供給源としての材料)・ワークショップでの講演で訪日した。「今、CO2が問題となっていますが、石油の生産は5〜10年後にピークを迎えます」と教授は切り出す。

その石油に代わるエネルギーとしてサトウキビなどを原料として作られるエタノール(アルコール)が今、注目されているという。「バイオマスを加工してメタンガスや水素などのエネルギーを作ることができ、バイオ燃料として活用できるのです」と教授は説明する。今、各国でこの代替エネルギー技術の研究をすすめているが、日本の技術が一番進んでいる。すでにビールを作った後のかすを利用してエネルギーを作ることに成功している。

最近トヨタがエタノール車を走らせて話題となった。日本ではガソリンにエタノールを混ぜる割合は3%までだが、ブラジルでは25%まで許可され、さらに新車の90%はフレキシブルであり、ランダムに両方の燃料が使用できる(flexfuel)。石油の枯渇危機、またCO2問題から、ブラジルで行われているような燃料の混合化が世界で本格化し始めている。

「砂糖キビの3分の1は砂糖又はエタノールの原材料となり、残りは廃物となっていましたが、それでエネルギーが作れるのです」。食品会社がエネルギー会社に変貌したり、さまざまな製品が作られたりすると教授は予測する。「石油で作ったプラスチックは分解できませんが、バイオプラスチックの場合は生物分解され、自然に戻すことができます」。エコロジーの観点からもバイオマスは注目されている。

となると、そのバイオマスをどのように調達するかが問題となる。日本では沖縄でサトウキビが栽培されているが、島という狭い環境では作業の機械化が難しく、大量生産が望めない。そこで、注目されるのが資源大国のブラジルだ。「今、世界中のガソリンに混ぜられているエタノールの1%をブラジルで作っていますが、これを10倍に伸ばす計画があります」と教授は語る。

「技術を持つ日本と資源を持つブラジルは最高の組み合わせです」と、二つの国の橋渡しをする日系の教授は微笑む。ブラジルに日系人が多いのは、ブラジルの移民政策により30万人の日本人が移住したからだが、現在は、逆に約25万人の日系ブラジル人が日本に出稼ぎに来ている。教授には日本人の気持ちが半分あるという。

日本語が大人気のブラジル
鈴木教授が勤務しているカンピナス州立大学は研究に力を注いでいる。公立学校なので授業料は無料ということもあり、入学希望者は6万人にのぼる。入学できるのは3千人ほどだから、優秀な人材が集まる。ここでは9ヶ国語の言語を外国語として教えているが、最近は日本語の人気が高まっているという。

「学生は日本のアニメ、漫画、テレビゲームに熱中しており、その影響が大きいと思います。これらの分野は日本が世界的に進んでいる一方、ロボット工学の研究でも日本は最先端にいます。アニメや漫画は日本の優れた知識を学ぶための入口の役割を果たしていると思います」と教授は分析する。

ブラジルでは、日本語学部は6ヶ所の総合大学にあるが、カンピナス大学では課外単位として150人ちかくの学生が日本語を勉強している。4人の先生が日本語を外国語として、ポルトガル語話者にあった方法で教えている。日本語の文の構造や文法が、西洋の言語と全く違うからだ。

鈴木教授は、一方で、西式健康法に興味を抱き実践している。対症療法に重点を置いた西洋医学とは異なり、人間が本来持っている機能を根本から活性させる健康法で、西勝造氏(1884〜1959)が創設したものだ。「日本の文化には欧米にないすばらしいものがあります」。エコロジーを大切にする教授は、そこに共通するものを見出しているようだ。

西式健康法の原則は生野菜を多く取ることだが、教授は自ら畑で野菜や果物を作る。西式の効果は多くの人に実証され、今や日本のみならず世界にもその輪は広がっている。インタビューに同席した西会本部長の西万二郎氏(勝造氏の孫)が、「ロシアでは今ブームで、西式健康法の本が8冊も翻訳されているのですが、いずれも海賊版です」と苦笑するほどだ。

1962年に出版された「沈黙の春」(Silent Spring)の中で、作者のレイチェル・カーソン女史は化学物質による環境汚染の重大性について最初に警告を発したが、地球はますます汚染されている。エネルギー問題は人体にも多大な影響を与える。バイオマスに人類の未来が託されていると言っても過言ではないようだ。

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