日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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カメレオン女

カール・M・バクスター

女性は結婚対象者を探している。一方男性は「ちょっとした遊び」をしたいと思っているようだ。私もそうである。実際、そのためには結婚に興味があるとほのめかすかもしれない。また、この実話が示しているように、不誠実なのは男性だけではない。

それは去年の夏のことだった。私が駅の中に入ろうとしたとき、若いきれいな女性がそこに立っているのに気づいた。彼女は私にトカゲを思い出させた。これはお世辞には聞こえないが、異星人のような美しさだったという意味だ。日に焼けた不思議なオレンジ色の肌、緑のコンタクトレンズをした目、シルバーともブロンドとも見える髪、彼女の肌はプラスチック人形のように極端になめらかだった。彼女の顔から、彼女が何を考えているか、何も考えていないのかを読み取ることはできなかった。とにかく、魅力的でエキゾチックなので、私は魅せられた。これ以上の説明はできない。

私は彼女に声をかけたが、彼女はほとんど英語がわからなかった。そこで、少しはましな私の日本語に切り替えた。彼女が大学1年生で19歳ということがわかったが、典型的な‘コギャル’の高校生に見えた。彼女は私を好きなようだった。ヒップホップの音楽が好きで、私が野球をするか聞いてきた。

しかし、デートを申し込むと私を無視し始めた。「ときどき電話してもいい?」「いいわ」。しかし、彼女は今週はとても忙しかった。「じゃあ、来週電話しようか」「あら、ごめんなさい、私、自分の電話をもってないの」「その手に持っている小さな携帯電話は何なの?」「これは友達のものなの。今夜返さないといけないの」。これ以上は進まなかったので、私はかかとを鳴らし、相手になってくれた彼女に感謝して歩き去った。

私は彼女が誰を待っているのか気になったので、近くにあったコーヒーショップに入り、彼女を見ていた。その10数分後、太って、汗かきで、はげで、背の低いサラリーマンが現れた。仕事を怠けてきたように見えた。彼ははげた頭の汗をふいていたが、彼女は満面の笑みをうかべ、二人は腕を組みながらすぐに行ってしまった。私は追うつもりはなかった。何が起きているのかは、あきらかだった。彼女は援助交際をしていた。私はそこでコーヒーを飲みながら、人間の本質について考えた。

次の数週間は何も起こらなかった。それから、また彼女を見た。同じ駅に立っていた。彼女は私を覚えてはいないようだったが、親しげで、私達は話し始めた。「あなたは、故郷のガールフレンドに似ている」と私は言った。日本女性は欧米女性に劣等感をもっていると知っていたので、彼女を嫉妬させようとしたのだ。それでなのかはわからないが、今回は私に電話番号――ハローキティの絵のついた名刺しに書かれてあった――をくれて、週末に電話をしてくれと言った。

数日後、彼女に電話をすると、私にもう一度会いたいと言った。二人は欧米人のウエイターがいる、青山の小さなしゃれたコーヒーショップに入った。そこで彼女は、自分は悪い高校生で、英語の勉強をさぼったと話した。彼女は私に英語を教えてくれないかと言い、私はもちろんと答えた。最初のレッスンはほとんどお世辞だった。「アーモンドのようなきれいな目だね。背がほとんど私と同じだから、モデルをしているの?」

それから彼女と何度か会った。私達は、クラブへ行ったり、映画がを見たりし、私は自分のことを話した。30歳ちかくで、そろそろ家庭を持ちたいこと、英会話学校が私をマネージャーに昇進させたいと思っていることなどだ。彼女は私の西洋人ガールフレンドの事を聞いてきた。別れたと言うと、奇妙なことに彼女は満足したようだった。私はうまくいく道が見えた。

ある夜、すてきなレストランで食事をした後に、私は彼女を家まで送った。別れのキスをする前に、私は彼女に大切な話があると言った。彼女は私を小さなアパートに招き入れ、落ちつかないようにコーヒーをいれた。しかし、彼女が私の隣に座ったとき、私達はコーヒーには手もつけず激しく抱き合った。

しばらくして、暗闇の中、私の隣で彼女が穏やかに眠っていた。私は彼女が彼女自身を私に捧げたことに気づいた。私が意志を誤解させたからだ。基本的に、このような女と残りの人生を一緒に過ごすことを考えただけでも背中に寒気が走った。実際、自分が求めたものを得たのであるが、今はこの状況にうんざりしている。

数分後、彼女は目覚めると驚いた。私はすでに服を着て、出る用意をしていたが、怒った顔で彼女を見ていた。「どうしたの、カール?」と、彼女は言った。「これだよ!」私は叫んだ。そして、日焼けローションのビンと髪染めの商品を投げつけた。

「嘘をついたな」。初めはショックでだまっていた彼女は、それから怒り始めた。「どういうこと?」と、彼女は叫びながら私に近づいてきた。「お前のきれいなブロンド・シルバーの髪――それは嘘だ!」と、私は叫んだ。「染めただけだ。肌の色さえも偽者だ。そのお前の目は何だ?」私は驚いたような声をあげた。「コンタクトレンズをはずしたわ」と、彼女はどもりながら言った。「私の目は、日本人の黒よ」。「グリーンじゃないの? 背も低いね」。私はあえぎながら言った。裸足だと高い靴をはいたときより6インチ(約15センチ)以上も低かった。

「ごめんなさい、どうしたらいいの?」。「何もして欲しくないさ。だって、お前のしていることすべてが、嘘だから。お前は人間じゃなくて、カメレオン女だ」。私は彼女から離れ、ドアをバタンと閉めて歩き去った。街を歩くうちに、私の怒りはおさまっていた。彼女に対してはもう怒っていなかった。男も女も互いに偽る体質に私は怒っていたのだ。

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