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たけしが「先生」と呼ぶタップダンス界のカリスマ

「THE STRiPES」リーダー HIDEBOHさん

北野武監督のリメーク映画「座頭市」(2003年ベネチア国際映画祭「監督賞」受賞作品)のエンディング――祭りで農民が楽しそうに踊るあのタップダンス・シーン――は、世界の映画ファンに鮮烈に焼き付いているに違いない。勝新太郎が演じてきた人気シリーズ座頭市のイメージとは全く違う意表を突く演出で、北野武・座頭市の最大の見所となった。

あのラストシーンの中央で踊っていたのは、リーダーのHIDEBOH、RON×U、SUJI.、NORIYASUの4人のタップダンス・ユニットTHE STRiPESだ。正確に刻まれるタップのリズムと、従来のタップダンスの枠にとらわれない彼らのパフォーマンスは、日本のみならず世界でも評価を受けている。昨年、アメリカのシカゴで開かれた世界タップフェスティバルにはアジア代表として招かれたほどだ。

タップダンサーになるために生まれてきた
OSKのダンス振付師の父と、SKDダンサーの母の間に生まれたHIDEBOHさんは、両親がタップダンス・スタジオを始めたこともあり、6歳からタップダンスを学び、16歳ではすでに教え始めたという。中学生の時には、アルバイトで、当時日本で人気絶頂のアイドルグループ、シブがき隊のカメラリハーサルの代わりなどをしていた。「芸能界は嫌いじゃなかったです。でも、この世界に入るなら、タップダンスしかないと思いましたね」とHIDEBOHさん。若くして、その進路を決めていた。

タップダンスには、ミュージカルを中心としたブロードウェイ・スタイルと、より創作的で、アドリブなども多用するリズムタップがあるが、HIDEBOHさんは後者の方だ。タップダンスのルーツはアフリカ系アメリカ人のクロックダンス。「奴隷として手は鎖で結ばれていても、足は動かせる」というところから発達したという。

HIDEBOHさんは、芸を磨くためにアメリカに一年半ほど住んだ。当時は好きなサミー・ディビスJr.の影響もあり、日焼けして黒人のような髪型をしていた。「アメリカのタップダンサーから、『Who are you?』と言われました。日本人ならアジアのテイストを出さないと駄目だと言われたんです」。HIDEBOHさんは、帰国して『Who am I?』と自問した。それが、ダンススタイルの確立につながった。

「メンバーとの出会いは、ミュージシャンのNORIYASUが最初でした。彼にはミュージシャンらしからぬところがあり、それがいいんです。RON×U、SUJI.は、教え子です」とHIDEBOHさんはいきさつを話す。ユニット名のTHE STRiPESはタップダンスの発祥の地、アメリカに敬意を表し、アメリカの国旗「Stars & Stripes」からとったという。

北野監督からは教えられることが多い
THE STRiPESを一躍有名にしたのは、何といっても座頭市だが、その出演のきっかけとなったのは、「たけしの誰でもピカソ」という番組だ。外国人のためにここで説明しておくが、北野武監督は映画監督以外でも、日本でもっとも有名なタレント(コメディアン)で、映画以外の仕事では「ビートたけし」の名前を使い、数本のテレビ番組の司会もしている。5年ほど前にHIDEBOHさんがこの番組に出演した縁で、たけしにタップダンスを教えることになったのである。

HIDEBOHさんはたけしについてこう語る。「タップダンスを一からやり直したいということでしたが、作品の中で使うだけではなく特別に思い入れがあるようです。芸を身につけるのが芸人という考えを持っていて、取り組み方が違います。5年ほど前から家や収録前のスタジオへ行って教えていますが、毎日2時間ほど練習しているようです。ぼくのことを『先生』と呼ぶんです。心苦しいので、HIDEBOHと呼んでくださいと頼んでも、それは駄目だとまじめに言うんです。たけしさんは意外とシャイですが、ほんとに頭のいい人で、発想がすごい。こちらが教えられることが多いです」。

タップダンスに新たな可能性
メンバーはHIDEBOHさんも含めて、時間のあるときには今でもタップダンスを教える。タップダンスの生徒は20代前半から30代前半がほとんどで、そのうちの9割が女性だという。「カルチャーはファッションからきています。タップダンスをむずかしくとらえるのではなく、かみ砕いて一般の人に広げていかなければいけないと思います」と、HIDEBOHさんは、タップダンス界の第一人者として、その裾野拡大に人一倍情熱を抱いている。

2005年11月には、6月に品川プリンスで行われたライブを収録したDVDも発売したが、HIDEBOHさんのタップダンスについての取り組み方が伝わってくる。単に洗練されたタップのテクニックを披露しているだけでなく、さまざまな楽しいストーリーを展開している。中でも、バスの乗客と運転手に見立てたストーリーには、誰しもが笑いをこらえられないはずだ。100分のステージを終えたメンバーは、まるで全力で戦ったサッカーの試合が終わったようにみな汗だくで、見るものにさわやかな感動を与えてくれる。ともすれば、脇役的な存在だったタップダンスに新たな可能性を与えたといってもいい過ぎではないだろう。

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