日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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ゴッドファーザーを支える伝統的日本人妻は?

田井中整体院院長 田井中 理加さん

京都の長岡京に本部を置く田井中整体院は、今、日の出の勢いで成長している。3年前にゼロから始めたが、今では京都を中心に60ほどの店舗と、200人ほどの施術者をかかえるまでになった。この驚異の成長の背景には、信じがたいストーリーがある。

普通の生活が一転した突然の電話
理加さんは学生時代に、現在同社の会長でもある夫の田井中圭一さんと知り合った。素直で細かいことにこだわらず、物事の本質を見ぬき、リーダーシップを発揮する圭一さんに惹かれたという。やがて二人は結婚し、そして女の子が生まれ、不動産会社を経営する子煩悩の夫と、彼女は普通の生活に満足する日々を送っていた。しかし、4年前、警察から突然電話がかかってきた。夫が不動産取引にからむ容疑で逮捕されたというのだ。

警察から呼び出された理加さんにさらなる衝撃が走った。夫が指定暴力団の組長だと警察から聞かされたのだ。「警察は私から事情を聞こうとしましたが、私は夫がヤクザとは本当に知らなかったのです。お金は毎月ちゃんと入れてくれましたし、家庭も大切にしていましたから」と、理加さんは思い浮かべる。「家には、そのような友達を連れてきたことがありません。子供もかわいがっていましたし、家を空けることはしょっちゅうありましたが、仕事と思っていました」。

夫は結局起訴され、懲役9ヶ月、執行猶予3年の刑に処せられた。そのような状況での彼女の心境はどのようなものだったのか。「夫の親が私に謝りにきて、離婚しなさいとおっしゃいました。私に気遣ってくれたのです。でも私は離婚する気は全くなかったです。私の両親も彼は悪い人間じゃないからと私に同調してくれました。でも小学校へ通っていた娘は、ショックを受けノイローゼになりました。私は『あなたが知っているお父さんがすべてなのよ』と慰めました」と理加さんは淡々と語る。「でもそれまでいい人と思っていた人が近寄らなくなったり、反対に、あまり親しくなかった人が心配してくれたり、人の本当の姿を見ました」。

無一文からの再起
圭一さんは刑期を終えると、ヤクザから足を洗った。組織から抜けることは極めて大変なことだ。それと引き換えに田井中さん家族はすべての財産を失った。二人の新しいスタートはそこから始まった。これまでの人生を反省し、圭一さんは世の中のためになる仕事をしようと決意した。とは言っても、二人がすぐに始められる仕事は簡単には見つからなかった。考えた末に思いついたのが、理加さんの看護師の経験を生かせる整体の仕事だった。これなら元手なしで始められ、お客に喜んでもらえると、二人は確信した。

整体師を始めるといっても、施術する場所もない。それで、圭一さんは病院や老人ホームを回った。しかし、どこへ行っても理解されず門前払いだった。再起にかける圭一さんは断られても、断られても営業を続けた。そして、1,000軒ほど訪れたとき、ある老人ホームから、無償ならやってもいいという返答があった。圭一さんは快くそれを引き受けた。それが、田井中整体院の事実上のスタートとなったのである。その後、近くの温泉地などに、田井中夫妻や身内が出張して仕事をこなすなどして、徐々に拡大していった。

田井中整体院は、その後、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していくのだが、その特徴の一つは施術者のお客に対するあいさつである。明るく声をかけられればお客は気持ちがいい。多少腕が落ちたとしても、お客はその気持ちに満足してくれる。この単純だが、人間の心理を突いたサービスは評判を呼び、口コミで広まっていった。そして、さまざまな場所から出店の話が来るようになった。テナントとして入居しているドン・キホーテ(ディスカウントストア)の店長からはこう感謝された。「田井中整体院が入ってから、店員や他のテナントの意識が変わりました。おかげさまで、みんなが明るくあいさつをする気持ちのいいお店になりました」。この評判が、また次の店舗の紹介へとつながっていった。

強烈な個性を持つ夫
この成功の秘密は一体どこにあるのか。それは理加さんの夫、圭一さんの強烈なキャラクターにあるといえよう。金髪に染めた髪、描きこみのある眉、耳にはピアス、袖口からのぞく刺青、そして、股を開いて、そっくり返るような歩き方に、圭一さんを初めて見た人は、ビビってしまうに違いない。会長室には黒地に龍をあしらった漆の壁面があり、日本刀が二本、壁にかけられている。渡された名刺には名前と黒い下地に龍があしらわれている。今でも見た目は、映画に出てくるヤクザそのものだ。

しかし、圭一さんと話をすると印象は一変する。事業について夢を語るとき、目は子供のように輝き、こわもての顔は人が変わったように柔和になる。田井中さん夫妻は、この成長に伴い、施術者を養成する田井中癒学院も設立した。その後、東洋医学関係者の社会的地位の向上や社会的弱者に仕事を提供することなどを目的としたNPO法人、新東洋医学師協会も設立した。圭一さんは一度烙印を押されたものが、社会復帰することがどれだけ難しいかを身をもって体験している。それで、犯罪経歴者、多重債務者、母子家庭、家庭内暴力被害者など、差別を受けている人たちを積極的に受け入れ、社会復帰の手助けをしている。意外にも任侠の人なのである。

さらに、東洋医学の国際化、NPO発行資格のグローバルスタンダード化、海外の被差別者・貧困層に対する雇用促進のために積極的に動き回っている。現在台湾、タイでは実際に活動しており、中国、インド、アメリカ、ヨーロッパ、と圭一さんの計画は地球規模だ。強力なリーダーシップ、破天荒な行動は革命家の織田信長やライブドアCEOのホリエモンに通じるものを感じる。それでいて、話はざっくばらんで、冗談もうまい。タレントになっても一流になるに違いない。彼は、元ヤクザであったことを隠さない。むしろ、ヤクザの格好を継続し、自らがピエロ役となり会社の広告塔となっているのかも知れない。側近は言う。「あのスタイルは相手が外見をみて人を判断する人間なのか、踏み絵の役割を果たしていると思います」。

夫の浮気も笑い過ごすおおらかな性格の妻
日本でもっとも好まれている女優の黒木瞳に似た理加さんは、京都の美人コンテストで特別賞をもらったことがあるほどの美人だ。日本では「極道の妻(おんな)たち」という映画がシリーズ化されて人気となっているが、はたから見れば、理加さんはヤクザに騙された不幸な女と捉えられがちだ。しかし、圭一さんを内側からみれば、理加さんの慕う気持ちがわかる。また、圭一さんが理加さんにほれた理由もわかるような気がする。それは、どんなことにも動じない理加さんのおおらかさにあると言えそうだ。圭一さんは、ヤクザ時代は金と女の日々だったと公言している。「他に女性が何人もいることは知っていました。男の人って動物みたいなところがありますから、気にはならなかったです」と理加さんは笑う。この度量の大きい性格が彼女の魅力だ。

田井中整体院の代表的な施設が、京都伏見区に最近できた西日本最大のスーパー銭湯「ねねの湯」にある。「ねね」は、16世紀後半に百姓から這い上がり、天下を取った豊臣秀吉の正妻で、秀吉の成功を陰で支えた女性として名高い。田井中整体院の入口には、癒し業界で天下取りを目指す圭一さんのこわもてのポスターが貼られている。それとは対照的に、可憐な理加さんの写真はどこにも張られていない。ねねのように自らは目立たず、愛する男を陰で支える伝統的な日本の女性のように見える。その意を受けたスタッフは毎日明るい笑顔でお客様をお迎えする。

田井中整体院
www.tainaka-seitai.com Tel: 075-954-3003

新東洋医学師協会
www.new-oriental-medicine.org/ Tel: 075-952-4016

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