日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
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知的興奮を呼び起こす 日本語アルファベット

格言を楽しむ家族ゲーム――カルタ
外国人のみなさん、日本にはカルタという特に正月に家族で遊ぶ、200年以上も続いているゲームがあることをご存知だろうか。カルタには何種類もあるが、その代表的なものは「いろはカルタ」と呼ばれるものだ。

日本語のアルファベット47音で始まる一文字とイラストのついたカードが床にまかれ、格言が書かれたカードを、読み手が一枚ずつ読みあげる。参加者は該当するカードを誰よりも早く拾うというゲームだ。一番多く拾った者が勝ちとなる。格言を知っていればいるほど早く拾えることになる。最近はあまりやらなくなったが、子供への教育にもよいことから、今でも行われている。

日本のアルファベットは「あいうえお」、「かきくけこ」…という配列で覚えるのが今では一般的だが、長い間「いろはにほへと…」という配列の方が日本人には親しまれていた。「いろはカルタ」の名はこの配列に由来している。各カードに書かれている格言は、いつの時代にも通用するものばかりだ。いくつかの例を紹介しよう。カッコ内は格言の意味。

い:犬も歩けば棒にあたる(人間には思わぬ災難も幸運もふりかかってくる)
ろ:論より証拠(あれこれ論じるよりも、証拠が大切)
は:花より団子(風流よりは実利、外観よりも実質)

日本語アルファベットの配列には奥深い意味が…
「いろは…」の配列は、1000年以上前に創られたという「いろは歌」の配列である。「日本のアルファベット47文字を一度だけ使用して創った歌で、「いろは…」で始まる。全47文字の配列は次の通り。区切りを入れ、漢字を当てはめると歌であることがわかるが、昔と今ではアルファベットも多少異なっているうえに、歌も古文なので理解はしがたい。

いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす

[Using Kanji]
色は匂えど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見し酔ひもせず

この歌を現代風の文に置きかえると次のような意味になる。 「色の匂う名声も、いつかは散り果てる。この世は無常である。このはかなさを乗り越えるには、浅はかな栄華の夢をみたり、酔いしれたりしてはいけない」。

「いろは歌」の中には、仏教の基本的人生観を示す「無常の」思想が折り込まれていて、平安の昔から諸行無常を詠んだ名作とされてきた。日本の歴史上最も有名な宗教家、弘法大師の作と伝えられているが、本当の作者は定かでない。一説では、無実でありながら死罪とされた万葉の歌人・柿本人麿呂ともいわれている。この歌には無実を訴える暗号が隠されていたからだ。

どんでん返しの暗号が隠されていた
今、日本でレオナルド・ダビンチの素描に描かれた暗号が解読され、キリスト教の根幹を揺るがす闇の歴史が浮かび上がるという推理小説、「ダビンチ・コード」(ダン・ブラウン著)がベストセラーになっているが、「いろは歌」にも、それに劣らぬ暗号が隠されていたと推理できる。

いろは歌を7文字で折り返すと次のような配列になる。
いろはにほへと 
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし   
ゑひもせす

各列の最後の文字を縦に読むと、「とか無くて死す」となる。つまり、無実の罪を着せられて死ぬという意味だ。獄中で、冤罪により死にゆく者の心境を綴った暗号と解釈できるのである。人生の摂理を説いた歌なのか、自分を死に追いこんだ者への怨念の歌なのか、まったく正反対の解釈が成り立つ。これに付随して、もう一つの奇妙な符号がある。

日本で最も有名な復讐物語「忠臣蔵」とも奇妙な符号
外国人のみなさんは「忠臣蔵」をご存知だろうか。毎年12月になると決まって、この題名のドラマが、テレビや映画、あるいは芝居で登場する。今からおよそ300年前に実際に起きた事件を元にしたドラマで、日本人なら誰でも知っている。ストーリーはこうだ。

田舎の大名が任務のため上京した際に、将軍に仕える高官に意地悪をされ続ける。我慢の限界を超えた大名は、ついに、その高官を刀で切りつけてしまう。幸い、高官は軽傷を負っただけですんだが、大名は取り押さえられ、切腹させられる。そして、その大名のお城は取り上げられてしまう。大石蔵之助を中心とする家来は高官への復讐を誓い、江戸(東京)に潜伏してその機会を伺う。そして、12月の大雪の降る夜、ついに高官宅に討ち入り、復讐に成功する。

忠義を大切にする武士の鑑として、庶民から大喝采を受けたが、武士社会の秩序が乱れることを恐れた将軍は、全員切腹という厳しい措置をとった。庶民は彼らの死を悼み、彼らを題材にした芝居が何度も上演された。それが大人気となり、今日まで続いているのである。

歌舞伎でも「忠臣蔵」は定番となっているが、正式の題名は「かな手本忠臣蔵」となっている。忠臣蔵の「忠臣」は忠義に厚い家来、「蔵」は大石蔵之助から取ったに違いない。つまり、「忠義な家来の大石蔵之助」という意味だ。それでは、なぜ「かな手本」という文字をわざわざ入れたのだろうか。

昔は「かな手本」といえば「いろは歌」のことを指した。「いろは歌」をもとに、かなを学んだからである。「忠臣蔵」と「いろは歌」とはどんな関係があるというのか。ご存知のように高官宅に討ち入りをしたのは47士だ。くしくもアルファベット47文字と数字が一致する。そして、「とか無くて死す」は47士の無念さを表わす遺書と読み取れるのだ。

忠臣蔵は「いろは歌」よりずっと後世に起きた事件である。47士と47文字の一致は偶然だろう。「かな手本忠臣蔵」の作者は、その偶然を逆手にとり、「忠臣蔵」の前にわざわざ「かな手本」という文字を入れ、「いろは歌」に隠された暗号で幕府への無言の抗議をしたのかもしれない。

このように、「いろは歌」は日本の芸術や文学にも大きな影響を与えている。アルファベット47文字全部を一度だけ使用し、人生の無情を歌い、かつその中に暗号を忍ばせた「いろは歌」の作者は、ダビンチに肩を並べる天才であったに違いない。

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