日本をより理解するための傑作記事(ひらがなタイムズ誌面より)
Hiragana Times Japan-Behind the Scenes
 
HOME日本をもっと知るビジネス
日本をもっと知る - ビジネス

インターネットが創り出した

かつて日本の夏の風物詩の一つでもあった蚊帳は、エアコンなどの発達により、すっかり姿を消していたが、最近、復活の兆しを見せている。復活の仕掛人は静岡県の磐田市(Jリーグのサッカーチーム、ジュビロ磐田の地元)で菊屋を経営する三島治さんだ。

三島さんは亡くなった父からふとん店の菊屋を受け継いだ。しかし、ふとん店はすでに社会的ニーズを失っていた。インターネットビジネスが本格化し始めた1997年、三島さんはインターネットでの販売を開始した。蚊帳はお店ではめったに売れないのに、インターネットでは飛ぶように売れた。そして、その現象がマスコミの目にもとまり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で取り上げられるようになり「蚊帳ブーム」が起きた。

「モスキート・ネットだから、インターネットに向く商品なんだろう」と三島さんは冗談交じりで話していたが、静岡産業大学経営学部と磐田市が共同で、「蚊帳はどうして売れたか?」を調査した。調査は2001年〜2002年の2年間に菊屋で蚊帳を購入した1,700名あまりのアンケートをもとに行われた。

その分析から、「20〜40歳代で都市に住み、エアコンなど人工的な環境よりも自然環境を好み、良い商品なら多少高くとも買う」という蚊帳の購入者の人間像が浮かびあがった。そして、蚊帳は単に防虫対策で買われるのではなく、自然の風で涼をとりたい、蚊帳の中で家族が親密になりたいなど付加価値の面が大きいこともわかった。確かに防虫対策だけなら、無色無臭の薬品を使用したほうが、はるかに安く効率的である。

どうぞ蚊帳の中へ
蚊帳は防虫対策の枠を超え、今や、家族を親密にさせる不思議な空間を生み出す小道具として、年配の人には古き昔のノスタルジアを感じさせ、若者には新鮮な実用的インタリアとして脚光を浴びているようだ。蚊帳は和室に吊るという概念があったが、最近はベッド用の蚊帳が売れ始めているという。菊屋はさまざまな需要に対応できるように品揃えをしている。外国の蚊帳からマンションのベッドルームでも吊れる蚊帳柱まで、その品揃えは日本一を自負する。

ブームを創り出した三島さんは笑いながらこう語る。「こうなったのは神様のごほうびと思っています。最初は、ホームページも、ハローページも、イエローページもごちゃごちゃでした。皆さんから、いろいろな要望があり、その通りのことをしていたらうまくいきました。自分の思うことをしていたときはうまくいかなかったんです。今は、蚊帳で少しでも世界の人を救えればという気持ちです」。

三島さんは「どうぞ蚊帳の中へ」(発売ブッキング)という本を出した。蚊帳は虫を殺さずに身を守る道具として、平和な日本の心の象徴。著書にはこれまでの経緯と、蚊帳の考察が書かれている。蚊帳文化論とも言うべきこの本は示唆に富んでいる。

ちなみに、ペンネームは「三島おさむ」。日本の代表的な作家、三島由紀夫と太宰治の組み合わせだと三島さんは言う。三島さんの快進撃は、外国人にも飛び火しそうだ。蚊帳は下記のURLから購入できる。

(有)菊屋 
http://www.anmin.com/

■記事リストへ戻る

Copyright (C) 1998-2008 YAC Planning Inc. All rights reserved